「年末に退職する社員が、退職日までの分の給与を年明けすぐに支払ってほしいそうです。年末年始は何かと物入りなので給料日まで待てないらしく。そのとおりにしないといけませんか?」
年末年始はお休みで給与計算や経理業務の事務処理スケジュールはどうしても通常よりはタイトになります。そのさなかに退職する社員からの要望。担当者が「え~~っマジ?!」とプチパニックに陥ってもおかしくありません。
ですが、退職時の賃金にまつわる問題はちょっと注意が必要です。なぜなら労基法では、退職者の給与の支払いを迅速に行うことを会社に義務づけているからです。
そこで今回は、退職時の賃金について退職者から「はやく支払って」との要望があった場合に、どのように対応するべきなのかについて確認していきたいと思います。
退職時の給与はどうなる?
毎月の給与は、原則として「毎月払いの原則」に違反しない限り、就業規則に定められた「一定の期日に」支払われることになります。
よって、冒頭のように「当月末日締め翌月20日払い」というのも法律的にOKであり、この支払い期日内に支払いさえすればよい、ということになります。
ですが、例外として労基法では社員の退職時に社員から請求があった場合には、請求があった日から7日以内に給与を支払わないといけない旨を定めています。
社員の退職時における不当な足止めを防ぎ、社員や社員の家族の生活を守ることがその趣旨です。
したがって、就業規則(賃金規程)に「当月末日締め翌月20日払い」と定めてあったとしても、退職者から請求があった場合には、請求から7日以内に支払う必要があります。
退職金はどうなる?
「退職者から請求があったら、退職金も7日以内に支払わないといけないの?人によっては高額だから、計算や手続きやら大変なのにめちゃくちゃ困る・・・」
前段を読まれてこのように思われた、経営者や事務担当者の方もいらっしゃるかもしれません。
この点について、行政通達では「退職金は通常の賃金の場合と異なり、あらかじめ就業規則で定められた支払い時期に支払えば労基法違反ではない」との旨を示しています。
したがって、就業規則や退職金規程で具体的な支給時期について規定がある場合には、その規定にある支払い時期に支払えばOKだということになります。
支払い時期の規定がない場合には、労基法の定めにより退職者の請求から7日以内に支払わなければならないことになります。
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なお、社員に退職金を支払うことは法律で義務づけられているわけではありません。
ですが、就業規則に退職金を支払う旨が規定されていれば、それは社員との約束として支払わなければなりません。退職金支払いの義務は就業規則(退職金規程)によって生じるのです。
退職金について、就業規則などに支払い時期についての記載がなければ、(退職者からの請求があれば)原則通り7日以内の支払いになるのは、先にお伝えした通りですが、支給基準をはじめ退職金制度が確立されているのに、その支給時期が明示されていないケースはほとんどないでしょう。
・・・が、万が一ということもありますから、この機会に就業規則(退職金規程)を振り返ってみるのもいいかもしれません。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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