上司の方には、会社の業績を伸ばすために努力やチャレンジを促すよう、部下を教育・指導することが求められます。仕事の現場で日頃から人材マネジメントが任されているからです。
そのため、上司の活動のひとつに信賞必罰としてのペナルティー(懲戒処分)があるので、懲戒に関する知識を備えておくことが大切です。
知識不足による不適切な対応から職場の人間関係がぎくしゃくする・・・というのでは本末転倒だからです。また、そもそも懲戒処分は教育的指導として行うものなので、本人のプライバシーにも配慮しなければなりません。
そこで今回は、下記の2点を中心に職場の人間関係をぎくしゃくさせないペナルティーへの対応について詳しく確認していきたいと思います。
- そもそもペナルティー(懲戒処分)とはどういうこと?
- ペナルティー(懲戒処分)の公表とプライバシーをどう考えるか?
ペナルティー(懲戒処分)とは?
懲戒とは、わかりやすく言えば、「職場のルールを守ろうとしない社員に対して教育・指導するための制裁罰」ということになります。
複数の社員が働く企業では、連携プレーで仕事をやっていくために秩序が必要です。会社は、この企業秩序を維持するために、違反行為があればその内容や程度を調査して、教育・指導によって改善することになります。場合によっては、就業規則に基づく懲戒処分を行うことで、企業秩序を取り戻さなければならないこともあるでしょう。
ペナルティー(懲戒処分)の対象となる行為を就業規則に規定し、これをしっかり社員に説明する。そうすることで、企業秩序を守ることを教育し、また企業秩序の違反を未然に防ぐことは、人材マネジメントにおいてとても重要なポイントです。
部下をもつ人には、このように就業規則の内容などをはじめ、教育にあたることが日常のマネジメントに求められます。
では、ペナルティー(懲戒処分)を行うとき、実務において注意すべき点を整理しましょう。
- 就業規則に明記された懲戒事由であること(例)経費の不正な処理をした場合
- 就業規則に明記された懲戒処分の種類であること(例)けん責、減給、出勤停止、降職・降格、諭旨解雇、懲戒解雇
- 行為と処分が均衡していること(過去にAさんは懲戒処分にならなかったが、同じ行為でBさんが処分を受けるのは×)
- 処分手続きを厳守すること(例)就業規則に懲罰委員会の開催が規定されているときは必ず開催する
- 二重処分禁止の原則を守ること(1つの違反行為に対しては1つの処分を下すものであること。同じ行為を2回懲戒処分にするのは×)
ペナルティー(懲戒処分)を科するには、こういった原則があります。あくまで教育的指導として行うものであって、上司のそのときの感情や気分に左右されるものであってはいけないからです。
ペナルティー(懲戒処分)の公表とプライバシー
懲戒処分は、企業秩序の維持のために認められています。ですから、部下がペナルティーを受けた場合、違反行為の防止などを目的に、公表する必要のあるときもあります。
次のようなケースです。
1)部下の指導教育のため
・他の社員も同じこと(違反行為)を行うことを抑止するため
2)公表による本人の自己抑制のため
・本人に対して反省を求め、再犯を防止するため
3)取引先への告知のため
・業務上の取引先、関係者に(懲戒処分で)社員でなくなったことを告げ、取引上のトラブルを回避するため
ただし、ペナルティーの公表については、「公表する企業側にとって、必要やむを得ない事情があるなど社会的に相当と認められる場合に限定されるべき」とする判例もあります。
ですから、ペナルティーを公表するときには、プライバシーや個人情報の保護の問題に配慮することが求められます。
次のように心がけることがポイントとなるでしょう。
- 必要最小限の表現を用いる
- 処分される者の名誉、信用を可能な限り尊重した公表方法を用いる
- 事実をありのままに公表する
再発防止のため、マネジメントの厳正化などを目的として、一般に公表するのではなく、一定の職位にあるマネジメント層の社員限定で、ペナルティーの内容を配布するような場合には、ある程度詳しくても構いません(動機、やり口、発見の経緯など)。
なお、部下の横領などについては、事実が判明するまで、横領と決めつけて社内で軽々しく公言してはなりません。名誉、信用の毀損として、その上司や会社の双方に損害賠償が命じられた判例もあります。
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会社の業績は、社員の行動によって生み出されるので、その行動レベルをよりアップさせることが上司となる人には求められます。
そこでいちばん求められるのは、「自分の部下を必ず成長させる!」との気概かもしれません。
その気迫や心意気は必ず部下にも伝わり、信頼関係を築く土台になります。
信頼関係をベースとしたコミュニケーションを心がけることで、部下にペナルティー(懲戒処分)を科さなければならない機会を、きっと最小限に留めることができると思います。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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