会社にしても、働き手にしてもこのご時世において、副業について「気になる!」ことは多いのではないでしょうか。
働き手にしてみると、収入源を増やしたい、自分の好きなことをやりたい、幅広いネットワークを築きたい、など副業の業態やその動機は人によってさまざまでしょう。
一方の会社にしてみると、副業をやりたい事情や背景は理解できるけれど、いざ社員から副業の申し出があると対応に迷われることも多いようです。
2足のわらじで疲労困憊になって、社員が体調不良に陥らないか心配もありますし、就業規則で兼業禁止が規定されていることもあるからです。
そこで今回は、社員の副業について会社はどのように対応するといいのか、詳しく確認していきましょう。
禁止できる兼業とは
そもそも労働時間以外のプライベートな時間をどのように過ごすかは、社員本人の自由です。習い事をしても、友達とカラオケに行っても、家族とごはんを食べようと、会社が立ち入る時間ではありません。
なぜなら、雇用契約は社員のプライベートな時間を全面的に拘束するものではないからです。ですから兼業(副業)をどこまで禁止するべきなのか?と判断に迷われるケースは多いと思います。
禁止の対象となる兼業とは、以下のような場合です。
- その兼業によって十分に休みがとれず、本来業務に支障が出る場合
- その兼業によって企業秩序が乱れる場合
1)と2)のような合理的な理由によって、就業規則において兼業禁止規定を定めるのであれば、その効力は有効となります。
では、次から具体的にそれぞれを確認していきましょう。
会社が兼業禁止規定を設ける理由
1)について、当たり前ですが人は適度に休まなければ、仕事に集中できません。兼業による疲れがたまって本来業務のときにボーッとしたりと、十分なパフォーマンスが発揮できないおそれがあります。
眠気から足をふらつかせた場合、例えば製造現場などでは能率うんぬんよりも危険ですよね。
本人だけでなく周りの社員にもケガを負わせてしまうかもしれません。
2)について、たとえば「○○○部の誰それさんは副業で結構な収入があるらしい」のような噂が社内に広まり、他の社員も同様に「その副業」にのめりこんでしまった。その結果、仕事に身が入らない社員が増え、取引先からのクレームも出てしまった・・・
こんなケースでは、「その兼業によって企業秩序が乱れる場合」に該当するでしょう。
禁止となる兼業の判断ポイントは、「業務を行うにあたって支障があるかどうか」です。ここでの支障とは、前述のような「本人の過労」や「営業秘密の流出」、「企業信用の失墜」といったことが考えられます。
このようなリスクに対応するため、会社は兼業禁止規定を設けるのです。
なお「兼業によって得られる報酬」については、禁止される兼業に該当するかの判断に関わりません。兼業による収入が本業の給料額を超えると、本業へのやる気がなくなって業務に支障が出るのでは、と懸念されるかもしれませんが、それはあくまで副次的なものだからです。
辞めたくない会社として社員に選ばれるには
最近では、労働時間以外の、社員が自由に使えるプライベートな時間まで会社が拘束するわけにはいかないので、兼業そのものを一方的に禁止できない、との考え方が主流です。
とはいえ、前段でお伝えしたように、副業やダブルワークには「営業秘密の流出」「過労による本人の体調不良」「会社の信用失墜」といったリスクが、会社側にも本人もあることも事実です。
ですから就業規則では兼業を「事前の許可制」と規定し、業務への支障が懸念される場合はその兼業を制限する、といった扱いにするのが現実的でしょう。
兼業(しかもその業務の報酬性は問わない)を認めてしまうと、「優秀な人ほど会社を辞めてしまうのではないか?」との懸念があるかもしれません。
けれど何もかもおんぶに抱っこ状態で、会社に依存する「ぶら下がり社員」ばかりをつくってしまっては、会社が伸びることはありません。
それよりも、兼業によって視野を広げ、他社でも通用するようなスキルを身に付けた優秀な社員が、「それでもこの会社で働き続けたい」と思うような職場づくりを目指したいですね。
社員が共感できるビジョンを掲げ、能力を正当に評価して処遇する仕組みをつくり、社員同士が切磋琢磨し合って、良い仕事をしていくための環境を社員へ提供したいと思えるかどうか?
副業が当たり前となりつつある今、社員に選ばれる会社の分かれ道なのかもしれません。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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