「仕事の処理が速い優秀な社員なので、つい仕事を頼んでしまいます」
「この人はどんな仕事にもとても時間がかかります」
「この人しかできない仕事をやってもらっています」
残業時間の記録を拝見すると、他の人よりも突出して残業時間が多い人がいる場合があります。前記のような理由からそうなるのだそうです。
残業時間を削減するのに大切なのは、次の3つの視点です。
- できる人に仕事が偏っていないか
- 優先順位をたてず無計画に仕事していないか
- チームで仕事が共有できているか
まずはこの3つの視点から、社員の残業状況がどうなっているのか、実態を把握することが大切です。
そこで今回は、この3つの視点から残業の削減には具体的にどうすればいいのか、実践ポイントを確認していきたいと思います。
できる人に仕事が偏っていないか
優秀なメンバーに仕事をまかせるとまさに「一を聞いて十を知る」、いちいち指示を出さなくても、先読みをして仕事をさばいてくれます。管理職にとっては人材育成の手間が省けて、納期まで安心していられます。
また仕事の結果や成果のみを重視する社風であると、いろいろなメンバーに仕事を割り当てるよりも、優秀なエース社員にまかせたくなります。
エース社員の体力と気力が続くうちはいいかもしれませんが、自分の頑張りと評価や報酬のつり合いがとれない、と感じたときに会社を去ります。
もしくは連日の残業で、本人がスキルをアップデートさせる余裕や時間がなくなり、成長の芽を摘んでしまうことにもなりかねません。
そうならないために、チェックポイントを下記にまとめます。
✅「成長の機会を与える」との名目で同じ人にばかり仕事を割り振っていないか
✅(管理職の)自分自身に人を育てる余裕(時間)はあるか
✅社内の評価基準は結果や成果しか重視しない(途中のプロセスを評価しない)ものか
優秀な社員をさらにステージアップさせるには、難易度の高い仕事へチャレンジしてもらう必要があります。
本人がしていた仕事を他の社員に下してそのフォローに回ってもらえば、マネジメントの基礎が学べ、管理職の負担も軽減されることになります。
優先順位をたてず無計画に仕事していないか
「なぜか仕事に時間がかかる」社員は、独自の「マイルール」を持っているかもしれません。仕事にこだわりを持って、時間をかけることで良い仕事ができる。これはもちろんその通りなのですが、コストの意識が全くないのが問題です。
組織で仕事をする以上は、時間の配分を考えなくてはなりません。またそのこだわりも必要とは限りません。仕事は自分のこだわりを押し通すことではなく、あくまでも顧客の要望に応えることだからです。
大切なのは顧客が求めるレベル(ゴール)から逆算して、何をやって何をやらないかを考えることです。
複数の仕事を並行して進める場合には、とりかかる優先順位をたてることも必要です。顧客の重要度を把握することも必要になってくるかもしれません。では、チェックポイントをまとめましょう。
✅顧客が求めるレベル(ゴール)を(その社員が)理解できているか
✅顧客が求めるレベルを完成するにあたって「何をやらないか」を(その社員が)理解できているか
✅複数の仕事を並行して行う場合、優先させる基準(納期、価格、顧客の重要度など)を(その社員が)理解しているか
仕事のやり方を一度伝えたからといって放っておくと、独自の「マイルール」に戻ってしまうので、これらを習慣づけできるよう何度も確認することが大切です。
チームで仕事が共有できているか
テレビドラマのように特命で「この人しかできない仕事」というのは、実際にはそうそうないのではないかと思います。
もし本当に「その人しかできない重要な仕事」があればそれはそれで問題です。その人が病気や離職でいなくなるような事態になれば、会社は甚大なダメージを受けることになるからです。
万が一その人に何かあっても他の人で代替がきくように、会社にノウハウを蓄積する方向に切り替えたいですね。
まず何をやっているのか、仕事の棚卸を行って大まかでいいのでマニュアル化することをめざしましょう。マニュアルは最初から完璧を目指すと途中で挫折してしまうことが多いので、まずは気負わず完成させることがポイントです。あとから随時ブラッシュアップしていけば良い、として割り切ることも必要です。
「専門職なので(仕事の棚卸しなど)難しい」ということなら、必ず社内でやるべき事業のコアとなるような業務と、社外へアウトソーシングできる業務を切り分けることから始めましょう。
チェックポイントは以下の通りです。
✅ある人にまかせっきりの仕事はないか(専門職を例外にしない)
✅今ある仕事は必ず社内でやるべきこと(コア業務)なのか
✅担当者が不在の際に代替できる体制にあるか
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残業削減に取り組むとき、まず残業発生のメカニズムを見極めなければ、社内制度をいくら整備してもそれを活かすことはできません。
残業を「あいつの仕事の仕方が悪い」と個人の問題にしないで、今年はメンバーとじっくり向き合って、仕事のやり方を見直す機会をつくりませんか?
仕事をよりうまく進める、新しいアイデアが生まれる可能性がきっとあることだと思います。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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