「課長から部内の若手に向けて、勉強会をやらないかと案内があった。これって課長からの業務命令なのかな?それともあくまで同好会レベルの話なのかな?(;・∀・)」
新年度がスタートすると、メンバーの能力を伸ばすために、社内で勉強会や研修を実施する機会が増えてくるのではないでしょうか。
仕事に必要な知識や新しいスキルを、一定の期間内でかつ効率よく身につけてもらうことを目的とされているのだと思います。
ただ、人材マネジメント上問題となるのはそれが「労働時間にカウントされるのかどうか」ということです。
そこで今回は、課長など管理職が主催する勉強会は労働時間にカウントされるのか、されないのか、詳しく確認していきたいと思います。
教育・研修が労働時間になるとき、ならないとき
会社が社員教育、研修などを実施するとき、その内容はさまざまなジャンルによると思います。
たとえば、スキルアップのための資格や技能の習得、実務に必要な職務知識、一般社会・経済の動向、法律関係・・・など多岐にわたるでしょう。
これらに参加するかどうかを全くの自由任意とした場合には、原則としてその教育・研修等の時間は労働時間にはなりません。
つまり、その教育、訓練、研修などへの出席、参加が自由であり、参加するかどうかについて社員の意思にゆだねられている場合には、会社の指示命令によるものとはいえません。
会社の指揮命令下にある労務提供の時間にはあたらず、労働時間にカウントされないことになります。ただし、教育・研修等が会社の主催するものであり、次のようなケースに該当するときは、労働時間になりますので注意が必要です。
- 社員にとって仕事内容、仕事内容と密接に関連するものであり、それに参加しなければ業務上支障や不利益が生じる
- 会社から「参加するように」との特命があり、参加しなければ人事評価で不利益な取り扱いになる
- 建前上は「自由参加」であっても、上記2点のように間接的に強制として参加せざるをえない状況である
小規模な勉強会の場合はどう考える?
では、会社による正式な「訓練」や「研修」とまではいかなくても、部署内の小規模なグループで行われる自主的な勉強会の場合は、どう考えるとよいのでしょうか。
特に業務命令権者の課長が主催者となって勉強会を社内で実施するようなときには、同好会やクラブ活動の一環なのか、それとも業務命令によるものなのかが問題となります。
この点を明確にして、自由参加であることを明らかにしておかなければ、「上司の支配下にあるため労働時間」と判断される可能性があります。
また、自由参加の形式をとっていても、もしも出席しないなら次のように何らかの不利益が定められている場合には、実質的には参加が強制されることになります。
- 出席しない者については、遅刻、早退、欠勤扱いにする
- 出席状況が悪いと、「勤務態度が悪い」と評価される
逆にいうと、勉強会が完全に自由参加のものであり、それに出席しないことについてなんの不利益も決められておらず、形式的にも実質的にもそのことが保証されている場合には、労働時間とはなりません。勉強会が時間外や休日に行われても時間外労働にはあたりませんので、残業代(割増賃金)の支払いも必要ありません。
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なお、コンサルティングをしていると、管理職が主催する勉強会や、社員さんだけの自主的な勉強会にまつわるご質問をよくいただきます。
それは、「(勉強会の会場として)職場の会議室を提供したり、ジュースや軽食の差し入れ、時には教材代を会社で負担したりしていると、その勉強会自体が労働時間とみなされないのか?」というものです。
この場合、福利厚生としてのサービスの提供であり、あくまで社員のスキルアップ促進のための教育援助と考えられます。つまり、労務の提供として会社の支配下に置き、拘束しているわけではありませんから、労働時間にはカウントされないことになります。
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「勉強会が労働時間になるのか、ならないのか」といったことは、人材マネジメントで必須の知識です(みなさんの残業代にも関わってきますから)。
現在は社会の変化が激しい不確実性の高い時代といえるので、ピンチのときでもチャンスの種を信じて探せるような、ガッツも求められるでしょう。
ですので、職場で勉強会の主催者になったときには「この勉強会で業種や職種、時代背景が変わっても通用するポータブルスキルを身につけてほしい」とのメッセージを、部下や周りの社員のみなさんに伝えたいですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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