
昨日、営業担当に顧客から納期遅延のクレームが入り、制作担当チーム総出で深夜まで作業にあたったらしい。昔取った杵柄で、部長まで作業に付き合ったそうだ。部長にも深夜残業の申請をしてもらう必要ってあるのかな?
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管理職の深夜残業で、深夜業の割増賃金についてふとギモンを覚える人事担当者さんです。
そもそも管理監督者には、労基法の定める、会社による労働時間の把握・算定義務は免除されていますが、「深夜業にかかる割増賃金についてはどうなるのか、部長には役職手当が支給されているけど・・・?」と気になったからです。
そこで今回は、管理職の深夜業にまつわる割増賃金と役職手当の関係について、詳しく確認していきたいと思います。
管理職でも深夜業は適用除外されない

管理職については、労基法における労働時間・休日に関する規定の適用はありませんから、時間外または休日労働に対する割増賃金の支払い問題は発生しません。
ですが、労基法では「労働時間」と「深夜業」とは区別されていて、「労働時間」には「深夜業」は含まれないとされています。これについて、判例でも下記のような旨が示されています。
- 労基法における労働時間に関する規定の多くは、その長さに関する規制について定めており、会社が労働時間を延長した場合においては、延長された時間の労働について所定の割増賃金を支払わなければならないことなどを規定している。
- 他方、会社が原則として午後10時から午前5時までの間に労働させた場合、その時間の労働について所定の割増賃金を支払わなければならない旨を規定しているが、それは労働が1日のうちのどのような時間帯に行われるかに着目して、深夜労働について一定の規制をしている。その点で、労働時間に関する労基法中の他の規定とはその趣旨目的を異にすると解釈される。
このため、管理職には労働時間および休日に関する規定の適用はありませんが、一方で深夜業に対する割増賃金については適用が排除されません(←適用されるということです)。
実務的にどうなる?

管理職の深夜業について、一番問題になるのは深夜業にかかる割増賃金といえます。というのも管理監督者については、労基法の定める会社の労働時間把握・算定義務が免除されているからです。
もともと労働時間の把握・算定が免除されているのに、深夜業についてはその時間帯の労働に応じた労働時間を把握し、割増賃金を支払うというのは「結局どうすれば・・・( ゚Д゚)」と少々矛盾を感じてしまいますよね。
そこで、役職手当や役付手当といった、管理職手当の中に「深夜労働」の割増賃金分も含めて対応するのが実務における一般的な傾向といえます。この場合、役職手当等の中に深夜労働手当〇〇〇円分を含むとか、〇〇時間分の深夜労働手当を含むと就業規則(賃金規程)に定めることになります。
なお、管理職の深夜業にかかる割増賃金としては深夜労働の0.25部分のみで、もともと労働時間や時間外労働の適用が除外されていますから、通常の賃金の1.0部分や時間外労働割増の0.25(1.25)部分の支払いは不要となります(0.25部分のみなので割増賃金額としては通常は多額にはなりません)。
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本文でお伝えしたように、管理職には労働時間、休憩および休日に関する規定は適用されませんから、深夜残業の取扱いについウッカリしがちです。
また、年次有給休暇に関する労基法の規定は管理職にも適用されますので、念のためご確認くださいね(「管理職になると年休はありませんよね?」と聞かれることがたまにあります^^)。


■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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