企業再建のため余剰人員を削減することになった。経営の建て直しを図るため、誰を整理解雇の対象とするかは大きな問題だ。必要な人材かどうかを見極めるには、人事評価を人選の基準にするのが合理的なんじゃないだろうか?
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余剰人員削減のためのいわゆる整理解雇は、他の普通解雇と決定的に異なる点があります。それは、大勢の社員の中から解雇対象者が選ばれることです。
そのため、整理対象者の選定には合理性(人選の基準が具体的かつ客観的なものであること)が求められることになります。
そこで今回は、人事評価を整理対象者の選定基準とすることの合理性について詳しく確認していきたいと思います。
整理対象者選定の合理性とは
企業倒産によって全員解雇となる場合は別ですが(←みんな事情が理解できるので)、大勢の社員の中からその一部の社員を選定して整理解雇するときは、なぜその者が対象者になったのかという合理的な理由が必要となります。
そのため通常は、「整理解雇基準」といった選定基準が作成されることになります。
整理基準とは、大勢の社員の中から解雇してもやむを得ないと思われる者を選定する基準なので、一般的には下記のような項目が挙げられることになり、その会社によって具体的に選定基準を作成しなければなりません。
- 解雇しても生活への影響が少ない者
- 企業再建、維持のために貢献することが少ない者
- 雇用契約において企業への帰属性が薄い者
このように会社が整理基準を作成し、これをもとに整理対象者を選定するという配慮をしなかったことは著しく信義に欠けるということで、解雇権の行使を権利の濫用とした判例もありますので注意が必要です。
人事評価を選定基準にしてもいいの?
一般的に人事評価では、成果(目標達成度など)、能力(業務知識、職務遂行能力、企画力、育成力など)、態度(規律性、責任性、積極性、協調性など)といった評価基準にもとづいて社員各人ごとに評価がなされています。
その結果をもとに社員間の総合順位が付けられる制度なので、人事評価では相対評価がとられています。人事評価が相対的なものであるとはいえ、これが継続的に実施されているのであれば、評価結果は客観性、合理性があると考えられます。
よって、整理解雇の対象者を選定するにあたって、人事評価の結果を選定基準にすることは、原則として客観的な評価にもとづくものということで合理性があるといえます。
とはいえ、人事評価が公正に運営されていなくて、その結果に疑問があるような場合には、会社は評価項目、評価方法、評価対象期間等を明らかにし、人事評価の結果が合理的であることを明らかにしなければならないでしょう。もちろん、人事評価が公正に運用されている場合は、評価の結果を整理解雇の選定基準として利用することは決して不合理ではありません。
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整理解雇の選定基準自体は適正なものであっても、その基準通りに選定されなければ何にもなりません。
選定基準が公正に適用されてこそ、はじめて合理性が担保されることになります。
整理解雇の対象者の選定について争いがあれば、会社がなぜその者を対象にしたのかについて合理性を立証しなければなりませんので、留意しておきたいところです。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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