先月の研修合宿ではレポート課題があり、各自作成して翌日提出するものだった。あるグループではディスカッションが白熱して、深夜に及んだらしい。「その時間は残業申請していいですよね」との質問があったけれど、これって残業時間になるの・・・?
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普段とは異なる環境で集中して、スキルアップや社員同士のつながりを深めてもらうために開催された泊まり込みの研修。翌日提出のレポート課題に取り組んだ時間を残業扱いにするべきなのか、判断に迷う人事担当者さんです。
というのも、他のグループから同様の声は上がっていなかったからです(課題はサクッと終わった、お菓子を食べながら談笑をまじえて取り組んだ、などの様子)。
そこで今回は、研修合宿中の深夜のディスカッションやレポート作成時間を会社はどのように扱うべきか、詳しく確認していきたいと思います。
会社が行う社員教育の時間について
会社が社員教育を行う場合、それが職務内容そのものまたは職務内容と密接に関連するものの場合、参加が命令されていれば会社の指揮監督下にある労働時間となります。
ただし、職務に関連する研修であっても自由参加とされていて、参加しなくても職務遂行に支障がないときは、指揮命令によって拘束されていることにはならないため労働時間にはあたりません。
一般的な研修や直接職務に関係のない社員教育については、完全に自由参加であり、参加するかどうかは社員の自由裁量にゆだねられている場合には、会社の明示または黙示の指示による業務命令としての教育とはいえません。そのため会社の指揮命令下にある時間にはあたらず、労働時間にはなりません。
とはいえ、形式上は自由参加としながらもそれに出席しないことについて何らかの不利益が定められている場合は、実質上参加を強制されることになるため労働時間となります。たとえば下記のような場合です。
- 自由参加の研修で出欠の点呼をとっており、欠席の場合は欠勤や早退扱いにする
- 賞与や昇格の評価で、自由参加の研修への出席状況が評価基準になっている
まとめると、出席しないことで何らの不利益もなく、そのことが制度上も実質上も担保されており、研修内容と参加状況からみても強制となっていない、100パーセント自由参加の場合は労働時間にはなりません。時間外や休日にこのような社員教育が実施されても、時間外労働や休日労働にはあたらず、会社としては割増賃金(残業代)の支払いも必要ありません。
研修合宿での深夜の討論やレポート作成はどうなる?
研修合宿中の討論については、この時間があらかじめ研修計画で必須のカリキュラムとして組み込まれており、参加の義務付けがある場合はもちろんのこと、自由参加が建て前であっても実際には直接・間接問わず強制参加として行われた場合には労働時間となります。
ですが、希望者のみの自由参加であり、それが完全に保障されているような場合は、合宿中の自由時間における個人的な自主学習時間と同じような時間であり、結果として全員参加であったとしても労働時間にはなりません。
職業能力開発促進法では、社員の生涯教育の理念にたった能力の開発や向上のサポートを会社の努力義務としており、自由参加のカリキュラムは会社による福利厚生や自己啓発援助として考えられます。そのため会社の指揮命令下に置いたことにはならず、労働時間には該当しないということです。
また翌日提出のレポートなど課題が出された場合も、その作成時間、場所等については拘束がなく、寝室に持ち込んで行おうと、早起きして行おうとも自由です。課題の作成時間について具体的な拘束がなく、その内容も裁量的なものであれば自宅での学習時間と同じといえます。会社の指揮命令下で業務を遂行する時間ではなく、自主的な勉強時間であるので労働時間とはなりません。
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「研修合宿中、朝食前にラジオ体操の時間があったけれど、あの時間はどうなるの?」
・・・これも本文と同様のことがいえます。ラジオ体操の参加が義務付けられており、参加しないことで不利益な評価がなされるような場合には強制力があるので労働時間になります。
ラジオ体操の参加は自由となっており、社員の自発的な意思にまかされていて、不参加であっても何らの不利益がない場合には労働時間にはあたりません。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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