会社の決済ルールの変更で、月末に売上、仕入や給与のタイミングをまとめることになった。給与締め日がこれまでから後にずれることになるので、給与計算期間が短くなって支払額がえらく低くなるけれど、これで問題ないのかな?
**
給与計算の締め日の変更で給与計算期間が短くなり、その結果支払額が低くなった場合、全額払いの原則(労基法で賃金は全額支払わなければならないと定められている)に違反しないのか?と心配になる担当者さんです。
給与計算の締め日と支払日の変更で、ただでさえ手続きが煩雑になるのに、社員さんから問い合わせがバンバンやってくることが予想されるからです。
そこで今回は、給与締め日の変更と全額払いの原則との関係について、詳しく確認していきたいと思います。
給与の締め日と支払日の設定
「給与計算の締め日は毎月〇日でなければダメ」「締め日まで働いた分はいついつまでに会社は支払わないとダメ」などと、給与の締め日や支払日の設定について法律上決められているわけではありません。
たとえば、給与計算の締め日は必ずしも月末に設定する必要はありませんし、ある月に社員が働いた分の給与をその月中に支払わないといけない、というわけではないということです。
不当に長い期間でない限り、給与計算の締め日からある程度の期間をおいてから支払うことも問題はないと解釈されています。
なお、労基法89条により、給与(賃金)について就業規則に必ず記載しなければならないのは、「賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項」となります。
休日には賃金を支払うことが事実上できないので、その直前または直後に支払う旨を規定しておきましょう。
締め日の変更で支払額が少なくなっていいの?
では具体的に、給与計算の締め日と支払日を変更した場合について確認していきたいと思います。
※変更を9月に実施することとする
【変更前】
・給与計算の締め日:毎月20日
・支払日:当月末日
【変更後】
・給与計算の締め日:毎月末日
・支払日:翌月10日
上記の例の場合、9月20日を締め日として給与計算して9月30日に支払った後、社内の決済ルールの変更により9月30日を締め日として給与計算して10月10日に支払う際に「支払額が低すぎる、全額払いの原則に違反しないのか?」とのギモンが生じるかもしれません。
この点について、そもそも全額払いの原則とは、あくまで支払うべき賃金の全額を支払わないとダメだということですから、9月30日を締め日として支払うのは、9月21日から9月30日までの期間に働いた分の給与である、ということを経過措置として就業規則(賃金規程)に明記すれば、全額払いの原則に抵触しません。
(←9月に制度変更することで、これまでなら9月30日に支払われるべき給与が10月10日に支払われるのであれば、不利益変更の問題が発生するので要注意)。
**
労基法では通貨払いの原則が定められており、社員が同意した場合には銀行等口座振り込み払いが認められてきましたが、キャッシュレス決済の普及や送金手段の多様化に対応するため、社員の同意を得た場合にはいわゆる「賃金のデジタル払い」も認められることになりました。
社員に強制しないことが前提となりますし、対象となるのは厚生労働大臣が指定した賃金移動業者に限られます(指定された賃金移動業者は厚労省ウェブサイトに掲載)。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
■提供中のコンサルティング
■顧問契約・単発のご相談を承っています
■役に立つ無料コンテンツ配信中
■ブログの過去記事