エアコンの使用が欠かせない季節は、オフィス内の換気がイマイチで・・・社員が感染症にかかったら、職場の感染症対策が不十分ということで社員に対する安全配慮義務違反に問われて、会社の責任になったりするのかな？
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もし社員から「（職場の換気が悪かったから）感染症にかかったのは会社のせい」といった苦情があったとしたら、どう対応したらいいのか・・・と判断に迷う人事担当者さんです。
とはいえ、感染症は普通に日常生活を送っていても感染する可能性も高いものですから、「会社の責任としてどこまで対策を行えばいいの？」とギモンにも思うのでした。
そこで今回は、職場での感染症対策と会社の社員に対する安全配慮義務の関係について、詳しく確認していきたいと思います。
職場での感染症対策
社員が感染症に感染したとしても、感染が業務によるものとの断定は難しく、業務と感染との相当因果関係（Ａという行為からＢという結果が生じることが相当であると考えられる場合にのみ、法律上の因果関係を認めるとする考え方）が認められることは少ないと考えられます。そもそも感染症は、社会生活を送るなかで感染する可能性も高いからです。
そして、職場での感染症対策について、「会社はこういった対策を実施しなければいけません」と義務付ける法令はありません。
さらに感染症は、職場の物的環境に起因する事故や職業性疾病とは異なり、医療機関など業務に従事するうえで感染症への感染リスクが高い職場でない限り、必ずしも職場環境や業務の過程で発生する危険とはいえないでしょう。
以上をまとめると、会社が職場での感染症対策を十分に行っていれば感染を防げたとまで言えない場合が多いため、会社が感染症対策を実施すべき安全配慮義務を負っていると評価される可能性は低いといえます。
感染リスクの高い職場と安全配慮義務
業務を実施する過程で感染症への感染リスクの高い職場（医療機関や感染者が多数発生している職場など）では、業務と感染との相当因果関係が認められることもあり得ます。
職場での感染を予見できたとして、会社が職場での感染症対策を十分に実施していれば感染を防げたと評価されることもあり得ます。
こういった場合、会社がその職場の特性に応じた感染症対策を実施すべき安全配慮義務を負っていると評価される可能性もあるでしょう。
この点について参考になるのが、新型コロナウイルス感染症の労災補償の取り扱いに関する通達です。そこでは、下記の旨が示されています（新型コロナウイルス感染症の５類感染症移行後も取り扱いに変更なし）。
- 医療従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合は、原則として労災保険給付の対象になる
- 医療従事者等以外の社員の感染が労災保険給付の対象になるには、感染源が業務に内在していたことが明らかに認められる場合か、感染リスクが相対的に高いと考えられる労働環境下での業務に従事していたことが必要
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会社の安全配慮義務については、本文でお伝えしたとおりですが、社員の健康保持や健康不安の払しょくのためには、感染防止のための基本的な対策を行うことが望ましいです。厚労省では、職場における新型コロナウイルス感染症対策実施のため「取組の５つのポイント」を公表しており、参考になります。
■その他参考になる資料へのリンク■
職場における新型コロナウイルス感染症への感染予防及び健康管理に関する参考資料一覧
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100％自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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