副業・兼業で社員が働きすぎて体調不良、会社はどうする?

積まれた資料の本の上に置かれた一眼レフカメラ。傍らにカメラのレンズ。黄色の花が添えられたカップ&ソーサ。

Xさんが仕事中に倒れてしまった。Xさんは勉強のため、うちの勤務時間外に別のY社でも働いていて、うちとY社での労働時間を合算すると月に100時間を超える時間外労働をしていたらしい。Y社での労働時間を把握していなかったが、会社としてどうしたらいいの?

 

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労基法では「労働時間は異なる職場で働く場合でも通算する」との旨が定められています

 

本業の職場での労働時間とその社員からの申告等により把握した、他の企業における職場(副業・兼業)での労働時間を通算することになりますが、社員からの申告等がなかった場合には、労働時間の通算は必要とされません。

 

そんななか、社員が過労で体調不良になってしまい、会社としてどう対応すればいいのか、悩みが深くなる人事担当者さんです。

そこで今回は、副業・兼業による長時間労働に会社がとるべき対応について詳しく確認していきたいと思います。

副業・兼業で労働時間はどうカウントする?

花瓶に生けられたダリアの花とタブレット。

労基法では「労働時間は異なる職場で働く場合でも通算する」との旨が定められています。また、「同一企業の異なる職場で働く場合だけでなく、異なる企業の職場で働く場合も労働時間は通算する」との旨も定められています。

 

たとえば、同じ日に近隣のA支店とB支店(A支店とB支店は同一企業)の両方で働いたときには労働時間は通算されるということであり、また同じ日にC社とD社の両方で働くと労働時間は通算されることになります

 

会社の安全配慮義務の観点から、副業・兼業における労働時間をどのように考えるかについて、厚労省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和4年7月改定)が参考になります。

 

ここでは、副業・兼業の場合には、副業・兼業を行う社員を雇う全ての会社が安全配慮義務を負っているとして、会社が社員の全体としての業務量・時間が過重であることを把握しながらも、何らの配慮をしないまま、社員の健康に支障が発生した場合、安全配慮義務違反が問題になるとしています。

 

そのため、同ガイドラインでは下記のような配慮をとるべきと示しています。

  •  就業規則において、長時間労働等によって業務上の支障がある場合には、副業・兼業を禁止又は制限することができることとしておくこと
  •  副業・兼業の届出等の際に、副業・兼業の内容について社員の安全や健康に支障をもたらさないか確認するとともに、副業・兼業の状況の報告等について社員と話し合っておくこと
  •  副業・兼業の開始後に、副業・兼業の状況について社員からの報告等により把握し、社員の健康状態に問題が認められた場合には適切な措置を講ずること

会社がとるべき対応は?

ページがめくられた本。コーヒーの入ったカップ&ソーサ。観葉植物のグリーンの鉢植。

前段でご紹介した厚労省のガイドラインによると、会社が社員の副業・兼業を把握しているのであれば、副業・兼業における労働時間の把握に何らかの措置をとるべきなのに何もしないで、長時間労働の実態を放置した場合には、安全配慮義務違反を問われる可能性があると考えられています。

 

ただし、これは社員が勤務時間外のプライベートタイムを利用して別の企業で働くなど、会社が副業・兼業の状況を把握することが必ずしも簡単だとはいえない場合までも、副業・兼業先での労働時間を把握する義務がある、と言っているわけではありません

 

実際のところ、社員が副業・兼業をしていること、その労働時間を会社が把握していたとしても、副業・兼業先に対して「労働日数を減らしてください」などと介入できる立場にはありません。そのため、会社として取り計らうことのできる健康確保措置にも限界があるといえます。

 

とはいえ、副業・兼業の状況を把握し、または把握できる状況にも関わらず、何らの健康確保措置もとらない場合には、やはり安全配慮義務違反が問われる可能性があります。

 

まとめると、会社には社員に副業・兼業の届け出を求め、副業・兼業での労働時間を把握し、長時間労働にならないよう調整を図るなど、一定の対応が求められるといえます。

 

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ちなみに、本業の会社では休日を付与しているのに、社員が自分の意思でその休日をつかって副業・兼業を行うとき、他社で働いたからといって本業の会社での休日労働となることはありません。

 

労基法で「通算しなさい」としているのは、あくまで労働時間であって、休日付与については適用されませんので、混同しないようご注意くださいね^^

収穫されたさくらんぼがいっぱいのかごが芝生の上に置かれている。傍らに麦わら帽子。

社会保険労務士高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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伸びる会社の就業規則作成コンサルティング。花びんに活けられた真っ赤なバラ。白の置時計。
社員を伸ばす人事制度構築コンサルティング。談笑するビジネススーツ姿の男女。

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