「最近では30歳代のメンタルヘルス不調も急増しているらしい。若手社員が多いうちの職場。メンタルヘルス対策として、うちで何をやったらいいのかな?」
メンタルヘルス不調は、その要因のひとつに働きすぎがあります。新型コロナウイルス感染症の影響などからフレックスタイム制や裁量労働制、在宅勤務などが広まりましたが、これらの働き方は自己管理がうまくできないと長時間労働になる側面もあります。
メンタルヘルス不調の社員に対する対応を適切に行うには、就業規則を整備することが重要です。
そこで今回は、職場のメンタルヘルス対策を就業規則に規定する際の留意点について詳しく確認していきたいと思います。
職場で求められるメンタルヘルス対策
メンタルヘルス不調の要因のひとつとして長時間労働が挙げられることから、上司(会社)は部下の労働時間マネジメントを通じて、健康状態を把握することも必要となってきます。
社員は自己保健義務(社員自身が自分の健康を管理し、進んで健診を受け、健康の保持を図り、会社の行う健康管理措置に協力すること)を負っているとはいえ、上司には長時間労働で過度のストレスがかからないよう配慮するとともに、仕事によって社員の健康状態に変化があれば、適切な診断、治療を受けさせ、労働時間の短縮をはじめとする仕事の調整、適切な配置等を行う責任があります。
厚生労働省では、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を定め、 職場において会社が実施する社員のメンタルヘルスケアの原則的な方法を示しています。
職場復帰におけるサポートについては、「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」が参考になります。
就業規則をどう整備する?
メンタルヘルス不調の社員への対応を円滑に行うには、あらかじめ就業規則を整備しておくことが重要です。休職の発令から復職(もしくは休職事由が消滅せずに退職、解雇)に至るまでの流れに沿って、そのポイントを確認していきたいと思います。
【休職の発令】
- 休職事由に①「私傷病による欠勤が〇日以上になったとき」と定めているケースは多いと思いますが、これに加えて②「精神または身体上の疾患により職務に堪えないとき」や③「業務上の必要性または特別の事情があって休職させることが適当なとき」といった旨の規定を定めます。メンタルヘルス不調の場合は、欠勤がずっと続くというよりは、欠勤と出勤を繰り返したり、通常通り働くことが難しくなることが多いためです。①の規定だけだと、休職発令が難しくなってしまいます。
- メンタルヘルス不調による休職の必要性を判断するために、「会社の指定する医師の診察を受けなければならない」旨を定め、社員に対する受診命令の根拠を規定しておきます。
【復職】
- 復職は、休職事由の消滅つまり治ゆ(休職前の通常の業務を遂行できる程度に回復した状態)が前提となるので、復職の申出には「医師の診断書を添付する」旨を規定しておきます。また、休職者との面談、会社の指定する医師の診断を指示できる旨を規定することも有用でしょう。
- いったん復職したものの、しばらくしてから同一または同種の疾病によって休職を繰り返す場合、「3か月以内に同一または同種の疾病によって欠勤や正常な勤務ができないときは休職とする。休職期間は直前の休職期間の残りの期間とする。その期間が3か月に満たない場合は3か月とする」といった旨を定めます。本人の症状が、再発というより実は治ゆしていなかったとも考えられるからです。
【退職、解雇】
- 休職期間が満了しても復職できないときについて、あらかじめ「期間満了時において、なお休職事由があるときは退職とする」旨を規定しておくことが、誤解を生じさせないためにも望ましいでしょう(休職は解雇を猶予する措置をとる制度のため)。
- 復職後、同一または同種の疾病によって2度、3度と休職と復職を繰り返すような場合は想定外であり、職務に不適ともいえるので、「業務に堪えないとき」にあたるとした解雇は、解雇権の濫用にあたらないと考えられます。
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「休職中のBさんのSNS、キャンプ行ってる写真がアップされてた(゚д゚)!」
休職期間中に遊びにいっているのを見ると、会社からすると単なるワガママのようにみえるかもしれませんが、遊べる程度にしか回復していないという状態だとも考えられます。
もちろん、まじめに勤務する同僚たちの不満のタネになったりと職場秩序を乱しかねませんから、療養目的から逸脱するような行動をしないように釘をさしておくことは必要です。
ただ、こうしたメンタルヘルス不調の状態もあるということを知っておくことが適切な対応につながると思います。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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