終業時刻をかなり過ぎたタイムカードに会社はどうする?

オフィスの休憩スペース。観葉植物の鉢植の前に丸テーブルとイス。テーブルの上に置かれたノートパソコンとカップ&ソーサ。

「始業時刻より早くにタイムカードが打刻されても、実労働時間のカウントは始業時刻から。じゃあ、終業時刻をだいぶ過ぎて打刻されたタイムカードはどう扱ったらいいんですか?

 

人事部に配属された新入社員にタイムカードのチェックをお願いしていると、質問攻めにあう先輩社員です。

 

終業時刻とタイムカードの打刻の関係は残業代(時間外労働)にダイレクトにかかわってきますし、社員が自主的に職場に居残っているケースもままあることから、「質問にきちんと丁寧に答えなくては!」と意気込むのでした。

 

そこで今回は、終業時刻をかなり過ぎたタイムカードと社員の自主的な居残りにとるべき会社の対応について、詳しく確認していきたいと思います。

終業時刻とタイムカードの打刻の関係

手帳の上に置かれたヘッドフォン。傍らにレモネードのグラス。

タイムカードには、機械的に時間を把握できる機能があるので、会社側が「職場に社員はいたけれど働いてはいなかった」との反証をしない限り、タイムカードの打刻によって把握される時刻を前提に労働時間として取り扱わなければならない、という推定が事実上働くことになります。

 

たとえば、就業規則に定める終業時刻が17時30分だとして、タイムカードの打刻時刻が20時だったとします。

 

この場合、20時近くまで働いていたとして労働時間の推定が行われるということです。もし、「それは部署の懇親会のためにタイムカードの打刻が遅くなっただけ(仕事はしていない)」ということなのであれば、その事実を会社が立証しなければなりません

 

判例でも下記のような旨が示されています。

  • 業務終了時刻とは、「労基法上の労働時間」と評価できる時間帯の終了時刻を意味する。タイムカードにより退勤時刻の記録が残されており、特段の事情が認められない限り、この時刻をもって会社の指揮命令下に置かれた状態から離脱したものとみるのが自然である。
  • 特段の事情を基礎づける事実関係は何ら主張されておらず、タイムカードに打刻された退勤時刻をもって、業務終了時刻と認めるのが相当である。

社員の自主的居残りに会社はどうする

デスクの上に置かれたノートパソコン。コーヒーの入ったマグカップと水のグラス。

上司が時間外労働命令を出していないのに、社員が職場に居残って法定労働時間を超えて仕事することは、日本の職場では「あるある」の光景かもしれません。

 

もちろん社員は、会社(上司)からの業務命令がないのに所定労働時間を超えて働く義務はありません(ましてや法定労働時間を超えて働く義務はありません)。

 

ですが、会社の業務命令によらないで、社員が自分の都合や希望で自発的に終業後も居残って仕事をしている場合で、社員を指揮監督する権限のある上司等がそれを知っていながらも残業を中止させずに放置していると、会社の指揮監督下の労働として黙示的に時間外命令を行ったと認められて、「労働時間になるのでは?」と思われるケースもあるのではないでしょうか。

 

これについては、ケースバイケースといえるので、一律に定めることはできません。つまり、自発的な居残りなのかどうか、その仕事をやることの業務上の必要性と、それを会社が容認する意思が認められるかどうかによることになります(判例においても、具体的事案の事情に応じて判断されています)。

 

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日々、タイムカードの打刻時の状況を確認して、その打刻時が終業時刻よりだいぶ遅いことがあれば、まずは該当の社員に「何があったの?」と確認することです。

 

もし、ダラダラおしゃべりしていた場合などはその行動をやめるよう注意する必要があります(ダラダラおしゃべりが習慣にならないように)。

 

たとえ終業時刻後であっても、会社は社員の労働時間マネジメントを怠らないことが重要だといえます。

ミルク缶のかたちをした容器からチョコチップクッキーがのぞいている。缶の傍らに紫色の花。

社会保険労務士高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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伸びる会社の就業規則作成コンサルティング。花びんに活けられた真っ赤なバラ。白の置時計。
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