子育て社員のことを考えると、学校行事の参加とか時間単位年休があると便利よね。通院とか家族の付き添いをしやすいよね・・・とはいえ、うちは一斉でやる作業が必要だから業務的になじまない点があるし、導入して職場が回らなくなっては本末転倒だし・・・
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社員の抱える色々な事情に応じて、柔軟に休暇を取得できるよう時間単位年休の制度があります。そこで制度の導入に魅力を感じながらも現場の運営を考えると、判断に迷ってしまう人事担当者さんです。
とはいえ、企業全体ではなくたとえばある営業所や支店のみ時間単位年休を導入することも可能だったりしますし、自社にフィットした選択を柔軟に考えられるといいですよね。
そこで今回は、(意外と知られていない?)時間単位年休の取り扱いについて詳しく確認していきたいと思います。
時間単位年休の導入はゼッタイなの?
社員の取得状況の管理事務が煩雑になる、ということで時間単位年休を導入しない企業もあります(導入するかしないかは企業の自由になっています。その理由は後述します)。
また年休は、法定の要件を満たすことで社員に法律上当然に発生する権利ですが、「事業の正常な運営を妨げる事由」があるときには、その日でない日を年休とするように指示する、会社の時季変更権の行使が認められています。つまり、取得に際しては事業の正常な運営との調整が考慮されるものといえます。
そのため、一斉に作業を行うことが必要とされる業務に従事する社員には、時間単位年休の制度がなじまないこともありえます。そこで事業の正常な運営とのバランスから、時間単位年休の導入要件である労使協定では、時間単位年休の対象社員の範囲を定めることになっています。
労使協定の単位はひとつの事業所ごとですから、企業全体ではなくたとえばとある営業所や支店のみ時間単位年休を導入することも可能です。
もちろん、職場の秩序やシフト勤務体制等に影響するので、時間単位年休を導入しないことにするのも問題ないとされています。
時間単位年休の取り扱いと労使協定で定めること
実際に時間単位年休を導入する場合には、職場で労使協定を締結する必要があります。
(労働基準監督署への届出は不要です。)
労使協定で定める項目は下記のとおりです。↓↓
- 時間単位年休の対象者の範囲・・・対象となる労働者の範囲を定める。一部の社員を対象外とする場合には、事業の正常な運営を妨げる場合に限られる(「子育て社員」など、取得目的などで対象範囲を定めるのはダメ)
- 時間単位年休の日数・・・1年5日以内の範囲で定める
- 時間単位年休1日分の時間数・・・1日分の年次有給休暇が何時間分の時間単位年休に相当するかを定める。1時間に満たない端数がある場合は時間単位に切り上げる(例:所定労働時間が1日7.5時間→8時間)
- 1時間以外の時間を単位として与える場合の時間数・・・2時間単位など1日の所定労働時間を上回らない整数の時間を単位として定める。
そして、実際に導入してからは下記の点に注意する必要があります。
- 年休を日単位で取得するか、時間単位で取得するかは、社員の自由選択による(社員が日単位で取得することを希望した場合、会社は時間単位に変更することはできない)
- 所定労働日数が少ないパート社員も5日の範囲で時間単位により取得できる
- 1日分の年休が何時間分の年休にあたるかは、社員の所定労働時間をもとに決めること
- あらかじめ労使協定において時間単位年休を取得できない時間帯を定めるのはダメ
- 所定労働時間の途中での時間単位年休の取得を制限しないこと
- 一日において取得できる時間単位年休の時間数を制限しないこと
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労基法によって会社には、年10日以上の年次有給休暇が付与される社員に対して、年休日数のうち年5日の年休を取得させることが義務付けられています。
ですが、社員が時間単位年休の取得を取得しても、この「5日付与義務」にカウントされませんので注意が必要です。
(↑なお、半休については0.5日として年休の5日付与義務にカウントされます。ややこしいですが、混同に要注意です)
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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