業務負荷の軽減のため、この春から勤務シフトを改編して勤務日数を減らし、労働時間を短縮させようとの案が社内で浮上している。勤務日数が減る分、給与も減ることになるけれど、これはノーワーク・ノーペイということで問題ないよね?(゚д゚)!
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勤務シフトの改編による減少した勤務日数分の給与の引き下げは、ノーワーク・ノーペイの原則に則って大丈夫なのかな・・・少しばかりの不安を覚える人事担当者さんです。
その不安のとおり(?)、勤務日数の減少に伴って給与を減額するということは、労働条件の変更に関わってくるので、その変更が「不利益変更」になるのか、そしてそれが有効なのかという問題が生じます。
そこで今回は、勤務日数の減少分に応じた給与の引き下げは可能なのか、詳しく確認していきたいと思います。
不利益変更となるのか
勤務シフトの改編による減少した勤務日数分の給与の引き下げは、ノーワーク・ノーペイの原則から問題ない・・・のでしょうか?
というのも、ノーワーク・ノーペイの原則とは、社員の意思によって(欠勤や遅刻など)労働契約で決められた労務の提供がなされなかった場合、会社がそれに対応する部分の給与相当分を支払わないことは法違反ではない、という意味だからです。
そこで減少した勤務日数分の給与の引き下げは、労働条件の不利益変更になるのか、また不利益変更となる場合に、これが有効となるのかが問題となってきます。
給与の形態に応じて確認していきたいと思います。
【完全月給制の場合】
- 完全月給制とは、1か月の所定労働時間に対していくら支払うかが合意されているもの。欠勤や遅刻などで労務の提供が一部なされなくても合意された給与が支払われる形態をいう。
- 勤務シフトの改編で勤務日数が減少しても、それだけでは給与を引き下げることはできない。減少した勤務日数分の給与の引き下げは、労働条件の不利益変更にあたる。
【日給制の場合】
- 日給制とは、一日当たりいくら支払うかが約束されたもの。勤務日数が減るとその分毎月の給与も減少する。
- とはいえ、日給制は労働日数も含めて労働契約が成立しているものと考えられる。1日当たりの給与額を減額していないとしても、勤務日数が減るとその分毎月の給与も減少することは、労働条件の不利益変更にあたる。
不利益変更は有効なのか
会社は、社員と合意することなく、一方的に就業規則を変更して社員に不利益となるように労働条件を変更できないのが原則です。
例外として、会社が就業規則の変更によって労働条件を変更する場合、変更後の就業規則を社員に周知させ、かつ就業規則の変更が合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、その変更後の就業規則の定めるところによります。
合理性の判断は、最終的には司法判断になりますが、給与の減額等についてはより高いレベルの合理性が求められることになります。
以上を踏まえると、減少した勤務日数分の給与の引き下げについて下記のように考えられます。
【完全月給制の場合】
- 1か月の所定労働時間に対していくら支払うかが合意されているので、勤務シフトの改編で勤務日数が減少した分給与を引き下げるというだけでは、合理性はないと考えられる(不利益変更の効力はなし)。
【日給制の場合】
- 1日当たりの給与額を減額していないとしても、勤務日数が減るとその分毎月の給与も減少することは、社員が受ける不利益は大きく、単なる勤務シフトの改編の必要性だけでは、合理性はないと考えられる(不利益変更の効力はなし)。
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長くなりましたので本文をまとめると、勤務シフトの改編によって勤務日数を減らし、その分給与を引き下げるような労働条件の不利益変更は、特段の事情がない限り、合理性が認められません。
ノーワーク・ノーペイの原則についても、誤解のないようにしていただければと思います。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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