復職にあたって本人の申告だけでは、本調子ではないのにかえって無理させてしまうかもしれない。うちの職場や仕事内容をよくわかってくれているお医者さんに診てもらってからがいいけれど、会社の指定医の受診を就業規則で義務づけることなんてできるのかな?
**
休職期間が満了しても復職できないときは、解雇または退職の猶予期間が経過したので、期間満了時に退職または解雇となります(一般的に休職は「解雇猶予の制度」と解釈されている)。
そのため、復職できるかどうかの判断について、慎重に検討を重ねる人事担当者さんです。会社にとって休職は、単に職場復帰を待つだけではなく、職場復帰後も継続して雇用するための制度だからです。
そこで今回は、復職できるかを判断するために、会社の指定医での受診を義務づける就業規則の定めは有効なのか、詳しく確認していきたいと思います。
会社が復職のOK・NGを最終判断する
休職とは、社員側の事情によって仕事に従事させることができない、または不適当な状況が発生した場合に、会社がその社員に対して労働契約関係そのものは維持させながら、一定期間の就労義務を免除することをいいます。
たとえば、就業規則の規定から、私傷病(業務外で発生したケガや病気)によって欠勤が長期間にわたる場合に「休職」処分にする、といったケースがあります。
私傷病による休職の場合、休職期間が満了しても復職できないときは、退職または解雇となるので、期間満了の直前に社員から「復職できる」との主治医による診断書の提出とともに復職の申出があるかもしれません。
主治医の診断書は尊重されるべき専門家の判断ではありますが、主治医は社員の仕事内容や職場環境などを熟知しているわけではありません。また、復職したいとの社員の強い要望を慮った診断書が作成される可能性はゼロとは言えないでしょう。
よって、主治医による診断書(復職OK)が提出されても、診断内容を参考資料として、復職できるかどうかの最終的な判断は会社が行うべきものといえます。
会社の指定医での受診を義務づけていいのか
復職にあたって、会社が指定医での受診を命令し、指定医が「復職OK」との診断を出せば復職させるとの旨を就業規則に規定した場合、これは有効となるのでしょうか。
言い換えると、この規定に基づいて会社は社員に指定医での受診を命令できるなら、社員の医師選択の自由を侵害することにはならないのでしょうか。
この点について、就業規則に受診命令を定めて、これに従い受診義務を課すことは社員の医師選択の自由を侵害するものではないと示した裁判例があります。
医師選択の自由は大いに尊重されるべきものとはいえ、会社と社員間の合意によっても制限できないものではなく、また、その内容が合理的であれば制約を課すことは可能だと考えられています。
よって、復職にあたって社員に会社指定医での受診を義務づける旨の就業規則の規定は、合理的であり有効といえます。
**
「復職にあたって、もし社員が会社指定医での受診を拒否したらどうなるの?」
この場合、社員が復職可能であることを証明していないことになります。会社としては、復職できるかの判断にあたって、マイナスポイントをつけざるを得ません。
ただし、社員から復職できるという合理的な立証がなされている場合は、会社指定医での受信拒否を理由に復職を却下することは難しいといえます。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
■提供中のコンサルティング
■顧問契約・単発のご相談を承っています
■役に立つ無料コンテンツ配信中
■ブログの過去記事