就業規則の違反行為がわかった社員に対して、減給処分が決定した。懲戒規定に則って減給の処理を行うも、エエッ、最低賃金を割っているじゃないの(゚Д゚;)これってマズくない?
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労基法では減給の制裁について、減給の最高限度が定められています。その限度とは、「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」となっています。
この決まりを守って減給すると、給与額が最低賃金を下回っていた・・・法律違反では?とドキドキする給与計算の担当者さんです。
そこで今回は、減給の制裁で最低賃金を割ると最低賃金法違反になるのか、詳しく確認していきたいと思います。
最低賃金とは
最低賃金制度とは、最低賃金法に基づいて国が賃金の最低額を定め、会社はその最低賃金額以上の賃金を社員に支払わなければならないとする制度です。
最低賃金の対象となるのは毎月支払われる基本的な給与です。働きすぎ(働かせすぎ)につながるおそれがあるため残業代やボーナスは含まれませんから、注意が必要です。
最低賃金の対象とならない賃金は、具体的には下記のようになります。
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
- 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
- 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
- 所定労働日以外の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
- 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
- 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当
減給の制裁と最低賃金の関係
前段でお伝えした「会社はその最低賃金額以上の賃金を社員に支払わなければならない」という意味は、「最低賃金額より低い賃金を社員と会社双方の合意の上で定めても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額と同様の定めをしたものとみなされる」ということとあわせて、社員に最低賃金額以上の賃金債権を与えなければならないということです。
よって、所得税の源泉徴収や社会保険料の控除などによって、社員の手取りの給与額が最低賃金額に達しない場合があっても、最低賃金法違反にはなりません(控除する前の給与が最低賃金を下回っていないので)。
減給の制裁も、所得税の源泉徴収や社会保険料の控除などと同様に、適法な控除として認められています。
したがって、懲戒処分によって減給することにより、その手取りの給与額が最低賃金を下回ることになっても、もともとの社員の賃金債権が最低賃金額以上になっていれば、所得税の源泉徴収や社会保険料の控除と同じく、最低賃金法違反とはなりません。
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会社が社員に最低賃金未満の給与しか支払っていない場合には、会社は社員に対してその差額を支払わなくてはなりません。
支払う給与が最低賃金額以上となっているかどうかは、下記のようにしてチェックできます。
【月給の場合】
月給÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
↑月給から最低賃金の対象とならない賃金の通勤手当、時間外手当などを除くことをお忘れなく!(‘ω’)
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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