うちの部には育児中で短時間勤務の社員がいる。実は今、うちは空前の繁忙期。ありがたいこととはいえ手が全然回らない。短時間勤務の社員にも残業命令を出したいのがホンネだけど、法律的にダメだよなあ・・・(;´Д`) (営業部 課長談)
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育児・介護休業法では、3歳未満の子を養育する社員で一定の要件を満たす者は、その希望により短時間勤務の適用を受けたり、残業を免除してもらうことができるようにしています。
社員にとっては仕事と育児のバランスが取りやすくなる制度ですが、冒頭の例のように、急な受注量増で対応にてんやわんやの時などマンパワー不足に悩む上司の方もいらっしゃるかもしれません。
そこで今回は、育児短時間勤務の社員に残業を命じることはできるのか、詳しく確認していきたいと思います。
育児中の短時間勤務と残業(所定外労働)の免除制度とは
会社は3歳未満の子どもを育てる従業員が希望すれば利用できる、所定労働時間を短縮する制度(原則として1日6時間)を設けなければなりません。所定労働時間とは、就業規則で定められた勤務時間のことです。
また、3歳未満の子どもを育てる社員は、会社に請求することにより、事業の正常な運営を妨げる場合を除いて、残業(就業規則で定めた所定労働時間を超える労働)を制限してもらうことができます。
たとえば就業規則で定められた所定労働時間が午前9時~午後5時の場合、この時間以外の労働を制限してもらうことを指します。
この短時間勤務と残業(所定外労働)免除の2つ制度は、別個のものなので、社員の希望によってどちらか一方の制度だけの適用を受けることができます。どちらか一方の制度の適用を希望したからといって、当然にもう一方の制度の適用を希望したと扱われることはありません。
もちろん、同時にどちらの制度の適用を受けることもできますし、どちらも適用を受けないことも可能です。
育児短時間勤務の社員に残業命令を出せるのか
育児短時間勤務の社員が残業(所定外労働)免除も請求していた場合、会社は残業を命じることはできません。
ただし育児・介護休業法では、残業(所定外労働)免除について「事業の正常な運営を妨げる場合を除いて」としています。
つまり、社員が、残業(所定外労働)免除の請求をしていても、「事業の正常な運営を妨げる場合」には、会社はその請求を認めないことが可能であり、例外的に会社は残業命令を出すことができます。
「事業の正常な運営を妨げる場合」にあたるかは、その社員の所属する職場を基準として、担当業務の内容、業務の繁閑、代替要員が配置できるかなど、諸般の事情を考慮して判断する必要があります。
なお、育児短時間勤務の社員が残業(所定外労働)免除を請求していない場合には、会社は残業命令を出すことができます。
ただし、それは無制限に認められるわけではなく、権利濫用にあたれば無効となります(連日、長時間にわたる残業命令を出すことで育児短時間勤務が実質的に意味をなさない場合など)。
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仕事と育児のバランスが取りやすくなる育児時短勤務制度ですが、制度を利用中の社員としては収入面や評価面、キャリア面などでさまざまな不満や不安、モヤモヤを抱えていることもあるかもしれないですよね。
会社(上司)としては、仕事の優先順位のつけ方や締め切りの設定などを話題に、こまめなコミュニケーションを心掛けたいところです。
フルタイム復帰したい、時短でも責任ある仕事がしたい、などホンネが聞けて、今後のキャリアプランの手がかりがみつかるかもしれません。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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