先日の雨で店舗の屋根が経年劣化していることが判明。1日だけ臨時休業して修理することになった。社員には休業手当を支払う予定だけど、その日に年休を申請している人がいる。別の日に年休日を変えてもらったほうがいいのかな? (カフェオーナー 談)
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お店が臨時休業の日にあえて年休をとっても仕方がない、社員にとって勿体ないんじゃないか?と気をもむオーナーです。
あらかじめ年休が申請されていた日に臨時休業することになった場合、会社として年休の時季変更権を行使できるのか、というのがこのお悩みのキモとなります。
そこで今回は、休業とした日に事前に年休申請が出されていた場合、会社としてどう対応するべきか、詳しく確認していきたいと思います。
年休申請日の日が臨時休業となった場合
会社に認められた年休の時季変更権は、いつでも行使できるものではありません。
年休付与は社員の希望通りに、というのが原則だからです。時季変更権は「事業の正常な運営を妨げる場合」に限定して認められます。
「事業の正常な運営を妨げる場合」とはどんな場合かというと、通達では「個別的、具体的、客観的に判断されるべきもの」としています。つまり、一律に決まるものではなく、具体的なシチュエーションに応じて、個別かつ客観的に判断する必要があります。
では休業日はどうなのかというと、たとえあらかじめ年休申請があったとしても、事業の正常な運営を妨げることにはなりません(休みだから・・・)。よって、会社の時季変更権は認められません。
休業扱いとならずに、もともとの予定通りに年休が成立することになります。
(会社と社員の話し合いで双方合意のうえの対応であれば、取り扱いの変更も問題ありません)
休業日を年休日にしてほしいとの申出
では、社員から「休業日を年休に振り替えてほしい」と事後の年休申請があった場合、どのように対応すればいいでしょうか。
休業扱いだと「休業手当の額=平均賃金×100分の60(以上)」となりますから、このような社員からのお願いごとがあるかもしれません。
結論からお伝えすると、会社はこれを認める必要はありません。年休とは、労働義務を前提としている日ではあるけれども、社員が個別に会社から労働義務の免除を得ているため、労働から解放されている日のことです。
そもそも労働義務がない休業日には権利を行使する余地がありません。
(会社と社員の話し合いで双方合意のうえの対応であれば、事後の変更も問題ありません)
なお、休業日が丸一日ではなく半日であった場合(冒頭の例でいうと、屋根の修理が午前中で終了したなど)、休業手当の額は下記のようになります。
【1日の一部のみ休業の場合】
休業手当の額=平均賃金×100分の60(以上)-一部労働の賃金
(全体として平均賃金の100分の60(以上)に達しない場合には、その差額を支給する)
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法定の年次有給休暇の取得は、「この日に休暇をとりたい」いう社員の意思表示だけで成立するので、年休日を決めてその旨を伝えれば会社の承認は必要としません(会社の時季変更権の行使がない限りそのまま休んでもよい)。
「病気じゃないのに年休をとってけしからん<`~´>」・・・というのは、誤った運用になってしまいますので、念のためご注意ください。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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