「即時解雇にするために解雇予告手当を支払おうとしても、社員が受け取り拒否したら会社は解雇できないの?」
勤務態度が悪い、無断欠席を繰り返すといった場合には、懲戒解雇の事由として就業規則に定められているのが一般的です。
懲戒解雇の場合、即時解雇にするなら解雇予告手当の支払いが必要となります。
ところが「(解雇予告手当を)受け取ったら解雇になるから受け取りたくない」と社員が受領を拒否してきたのなら、会社は解雇できないのでしょうか。
そこで今回は、社員が解雇予告手当の受領を拒否した場合に会社がとるべき対応について、詳しく確認していきたいと思います。
解雇予告手当の支払いについて
就業規則で「懲戒解雇のときは即時解雇とする」と定める場合、通常は解雇予告手当の支払いが必要となります。
ただし、労働基準監督署長の認定を受けることにより、その支払いが免除されます。
懲戒解雇の事案であっても、労働基準監督署長の除外認定を受けていない場合には、社員が突然解雇されて新たな就職先を求める際の時間的・経済的余裕のために、解雇するにあたっては「少なくとも30日前に解雇予告する」か、即時解雇のときは「30日分以上の平均賃金を支払う(解雇予告手当)」ことを会社に義務付けています。
とはいえ、労働基準監督署長の認定を受けるには手続きが煩雑であったり、事例が限定されていることもあり、実務上では懲戒解雇に該当する場合であっても、少なくとも30日前の解雇予告を行うか、30日分以上の解雇予告手当を支払うという運用がみられます。
受け取り拒否への対応はどうする?
では、即時解雇のため解雇予告手当を支払おうとしたものの、その社員が解雇予告手当の受け取りを拒否した場合、会社としてどのような対応をとればいいのでしょうか。
会社のとるべき対応として、下記のように3つ挙げることができます。
- いつもの給与の振り込み口座に送金して解雇予告手当を支払う
- 受け取りを拒否し、解雇予告手当を会社に返金してきた場合には、法務局に解雇予告手当の供託をする※「供託」とは、金銭、有価証券、その他の財産を、国家機関である供託所に寄託し、供託所を通じてその財産をある他人に受け取らせることによって、一定の目的を達する制度のことです
- 一度解雇予告手当を送金したにもかかわらず、社員が会社に返金してきた場合には、その社員が受け取りに来ればいつでも支払える状態にしておく。そしてその旨を文書で通知しておく。
このように、会社ができる限りの手続きを行うことで、社員が解雇予告手当を受領しない場合であっても、客観的に合理的理由があり、社会通念上相当である限り、その社員の解雇が認められます。
社員が解雇予告手当を受け取らなければ会社は解雇できない、というのでは道理に合わないからです。
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解雇手続きをスムーズに進めるには、本人にその解雇事由を納得させるように十分説明することが大切です。
(もちろん解雇理由は、明確かつ具体的なものでなければなりません)
解雇理由について本人が納得していた場合には、解雇通知書の受け取りを文書でもらうとともに、「解雇について異議ありません」との文書に署名押印をもらっておくと、後々になってのトラブルを予防できると思います。
周りに与える影響も考えて、会社として手間を惜しまないことが大切です。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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