Aさんから年休届が出ている・・・あれ、Aさんは育児短時間勤務中だから年休日の給与額はどうなるんだろう?(人事部の新人Bさん談)
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会社は、3歳未満の子どもを育てる社員が希望すれば利用できる、所定労働時間を短縮する制度(原則として1日6時間)を設けなければなりません(育児・介護休業法23条)。
勤務しなかった期間(時間)について給与を支払わないことは差し支えないとされており、AさんとBさんの会社では短縮時間相当分を控除していますが、年休取得日についてはどうすればいいのか・・・と戸惑うBさんです。
そこで今回は、育児短時間勤務中の年休日の給与についても欠勤控除を行ってもいいのか、詳しく確認していきたいと思います。
そもそも年休取得日の給与はどうなるの?
年休取得日の給与については、就業規則に定めることによって、「平均賃金」または「通常の賃金」を支払うことになります。
ただし、労使協定によって健康保険の「標準報酬日額」に相当する金額を支払う旨を定めたときは、これによることになります。
【原則】就業規則の定めによる場合
①平均賃金
②(所定労働時間労働した場合に支払われる)通常の賃金
【例外】労使協定で定めた場合
③健康保険法定める標準報酬日額に相当する金額
年休取得日の給与は、就業規則の絶対必要記載事項(どんなときでも必ず書いておかないといけないこと)としての「賃金」に該当するため、上記の①~③のいずれを選んでも、これを就業規則に規定しておく必要があります。
実務上は、上記②によることが多いと思いますが、月給者の場合「月給をその月の所定労働日数で除した金額」によって計算された金額となります。
育児短時間勤務中の年休日はどうなるの?
育児短時間勤務によって、勤務しなかった期間(時間)について賃金を支払わないことは問題ないとされていますが、勤務しなかった期間(時間)を超えて賃金を減額したり、賞与、昇給等で不利益な算定を行うことは禁止されています。
そこで育児短時間勤務中の賃金に関して、通常の勤務時と異なる賃金が支払われる場合には、その決定、計算及びその支払い方法、賃金の締め切り及び支払時期について就業規則に記載する必要があります。
「育児短時間勤務の適用によって短縮された所定労働時間に対しては無給とする」「育児短時間勤務中は短縮時間について、就業規則に定める欠勤の計算に基づき控除して賃金を支払う」といった旨を就業規則に規定しておくと、誤解がなくていいですよね。
さて、育児短時間勤務中の年休取得日の給料がどうなるのかについてですが、年休中の賃金は前段でお伝えしたように定められています。
育児短時間勤務中は、所定労働時間そのものが短縮されていることから、年休取得日についても短縮された所定労働時間を基礎に計算して問題はないということになります。
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育児短時間勤務の制度が「原則として1日6時間」とされているのは、たとえば通常の所定労働時間が7時間45分の職場では、キリのよいタイミングである5時間45分に短縮することが考えられます。
その場合、短縮後の所定労働時間は1日5時間45分でもOKだということです。
まとめると、短縮後の所定労働時間について、1日5時間45分から6時間までを許容するという趣旨です。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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