今年から評価者としてメンバーの人事評価をやることになった。「これはあなたの主観的な評価であって、正当な評価じゃありません、こんなの人格否定です」なんてメンバーから言われてしまったら、どうしよう。そもそも、人が人を正確に評価できっこないよ・・・。
**
人事評価にプレッシャーを感じて憂鬱そうなチームリーダー、みんなから反発を受けて人間関係にヒビが入ると、今後の仕事に差し障りが出るかもしれないからです。
そして「人が人を評価することは、不当に人を言いなりにさせることにつながり、人格権を侵害するので違法だ」といった主張に対して、どうも自信が持てないようです。
そこで今回は、人事評価は人格権を侵害するものでなく、人を貶めるものではないということを法律目線で詳しく確認していきたいと思います。
人事評価は企業のマネジメント行動のひとつ
人事評価をしたチームメンバーから「人格権を侵害している」「自分の言うことを聞かせたいだけで、チームの人間関係を分裂させる」などと反発されたら、評価者として戸惑ってしまいそうです。
ですが、人事評価は仕事や能力に応じた賃金の決め方、能力にあった昇進、教育の平等なチャンス、適正な人材配置を目的としています。
職場で働くメンバーに対する「成長してほしい」「活躍してほしい」との思いから、評価によって今後もっとよりよくしていくための機会にしようとするものです。そういう意味で、人事評価は人が人をマネジメントするための手段のひとつと言えます。
人事評価はたしかに人が人を評価するものですが、全人格を問題とするものではなく、提供される労働力に関連するスキル、勤務態度、知識や経験等を対象にして行うものです。
企業の事業運営をよりよくするためのマネジメント行動のひとつとして、あくまでも労務提供に関する成果や能力、態度を評価するのであって、これは適法な会社の権限行使なのです。
人事評価は会社の人事権の一部
会社が、社員の配置、異動、昇進、昇格等の人事権を的確かつ公正に行うには、社員の能力・適性を評価してそれぞれにふさわしい部署に配置し、あるいはより高度な仕事ができる能力・適性があると判定した場合には、それに応じた職位や資格を与えるために昇進、昇格を行う必要があります。
そして、社員がそれぞれの仕事を通じてどのように能力を発揮し、成果をあげているかを判定し、それに応じた昇給や賞与を考えることが必要となります。
さらには、社員が能力を十分発揮せず、成果を上げていない場合には、その社員の能力・適性に問題があるのか、勤務態度ややる気に問題があるのかなどを判定して、教育の機会を与える必要が出てきます。
こういった目的のため社員の能力・適性あるいは能力の発揮度、勤務態度や意欲を評価、判定するものが人事評価です。したがって、これは会社の人事権の一部といえます。
**
本文でお伝えしたとおり、人事評価は会社の人事権の一部で、会社の考えや判断にゆだねられているものです。
とはいえ、だからといって不公正で恣意的な人事評価が許されるわけではありません。
会社には、「公正査定義務」が労働契約上の信義則(労契法)、権利濫用の禁止(労契法)、公序良俗(民法)等の趣旨から発生することになります。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
■提供中のコンサルティング
■顧問契約・単発のご相談を承っています
■役に立つ無料コンテンツ配信中
■ブログの過去記事