「なんで会社は職場のセクハラ問題を放っておいてはダメなの?単に人間関係の相性が悪いとか、本人同士の問題っていうこともあるんじゃないの?」
管理職のAさん、セクシュアルハラスメント(セクハラ)が社会的に許されない行為であることはもちろん理解していますが、どうも腑に落ちない様子です。
男女雇用機会均等法では会社に対してセクシュアルハラスメント(セクハラ)防止の措置義務が課せられていますし、会社には職場環境の適正良好保持義務が判例上認められています。
つまり、セクハラ問題で会社に損害賠償義務が生じるケースもあり得るということです。
そこで今回は、なぜ会社が職場のセクハラ問題に取り組まないとマズイのかについて、詳しく確認していきたいと思います。
職場のセクハラ問題とは
職場のセクシャルハラスメントとは、「職場」において行われる社員の意に反する「性的な言動」により、社員が労働条件について不利益を受けたり(解雇、降格、減給等)、就業環境が害される(能力の発揮に重大な悪影響が生じる)ことをいいます。
この「職場」とは、会社が雇用する社員が業務を遂行する場所を指し、社員が通常働いている場所以外の場所であっても、社員が業務を遂行する場所については「職場」に含まれます。
たとえば取引先の事務所、取引先との打ち合わせの場である飲食店、顧客の自宅等であっても、社員が業務を遂行する場所であればこれに該当します。
次に、「性的な言動」とは、性的な内容の発言及び性的な行動を指します。この「性的な内容の発言」には、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布すること等が、「性的な行動」には、性的な関係を強要すること、必要なく身体に触れること、わいせつな図画を配布すること等が、それぞれ含まれます。
なぜ会社にはセクハラの防止義務があるの?
職場におけるセクシュアルハラスメントは、その被害者である社員の個人としての尊厳を不当に傷つけ、本来の能力を活かせないまま潰してしまう行為です。
企業にとっても職場の秩序を乱して業務の遂行を阻害し、社会的評価に影響を与える問題です。
職場のセクシュアルハラスメントは、いったん発生すると、被害者だけでなく行為者も退職に至るなど、双方にとって不幸な事態に陥るケースが多いことから、これに関する必要な配慮が会社に義務付けられることになりました。
それだけでなく、職場でのセクシュアルハラスメントが社員にとって働きにくい不快な就労環境を作り出し、企業社会の通念からしても著しく就労環境に悪影響をもたらし、その社員が退職せざるを得ない状況に追い込むほど、働く権利を妨害するようなレベルになった場合には、「職場環境を適正良好に保持すべき会社の義務」(社員にとっては適正良好な職場環境で働く利益)の違反といえます。
労働契約上の信義則に基づく付随義務の違反または不法行為としての注意義務違反となり、会社に損害賠償義務が生ずると、いまの企業社会の現状として解釈されるようになってきました。
会社には職場環境の適正良好保持義務が判例上みとめられており、法的な義務としても会社は、セクシュアルハラスメント対策を行わなければなりません。
冒頭のAさんのように職場のセクシュアルハラスメント問題の重大さを正しく認識していないと、多くの管理職は放置するか、かかわりをおそれて無関心を装いがちです。
職場の管理職がセクシュアルハラスメントの事実を知りながらほったらかしにすることが、一番問題をややこしくし、事態をこじらせる原因となります。
噂レベルの話であっても、セクシュアルハラスメント問題にピン!ときた時には、人事担当者の耳に入れて対策を講じることがとても大切です。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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