「タクシーの運転手はみなし労働時間制の対象外だから、営業担当が社用車で得意先を回るのもホントは適用しちゃダメなのかな(;゚Д゚)?」
タクシーの運転をはじめ運転そのものが業務の場合は、事業場外労働のみなし労働時間制の対象とはなりません。
では、営業社員が会社の自動車を運転して担当の顧客を訪問したり、出張に赴く場合はどうなるのでしょうか。通常の営業業務とは別に、自動車の運転業務がプラスされるのはその通りなのですが・・・
そこで今回は、会社の自動車を運転して営業活動や出張に出かける場合、事業場外労働のみなし労働時間制の対象となるのかについて詳しく確認していきたいと思います。
タクシーの運転と営業車での訪問の違い
オフィスの外で仕事をする場合、上司(管理者)が労働時間を把握するのは難しいため、労働時間をみなし制によりカウントすることができます。
みなし労働時間とは、「その日の実際の労働時間にかかわらず、その日はあらかじめ決めておいた時間労働したものとみなす」制度です。この事業場外労働のみなし労働時間制の対象となるには、下記の2つの条件を充たすことが必要です。
- 会社を出て(事業場外)の仕事であること(外勤・外交・外務労働を意味する)
- 会社の具体的な指揮監督や時間管理が及ばず、労働時間のカウントが困難である、というシチュエーションであること
タクシーの運転をはじめ乗客の送迎や物品運搬の目的をもった運転など、運転(運送)そのものが業務の場合には、事業場外労働のみなし労働時間制は適用されません。車両の入・出庫にもとづいて労働時間カウントの原則によらなければなりません。
ですが、自動車を訪問先への乗り物として使用する、単なる足として使う場合(便宜の供与)なら話は別です。この場合は、訪問先での手待ちや休憩といった業務内容そのものが自由裁量性と断続性を有しており、タクシーやトラックの運転の場合とは異なります。
そのため、会社の自動車を運転して営業活動や出張に出かける場合は、事業場外労働のみなし労働時間制の適用範囲と考えられています。
ケースバイケースになることも
ケースバイケースで判断され、事業場外労働のみなし労働時間制の適用範囲かどうかが区分される場合もあります。具体的には、下記のようなケースです。
【担当エリア内に設置された自動販売機に販売営業と集金のため自動車で赴く場合】
- 自動販売機の点検と商品補充、集金の目的で、商品等を搭載した自動車で赴く。
- 商品等を搭載しているとはいえ、一定のルートセールスで労働時間等には拘束がなく裁量的。上司から具体的な管理はなされていない。
このような場合には、取り扱う商品、積載量、その態様、賃金や営業の形態等から、事業場外労働のみなし労働時間制が適用されるかどうかが判断されることになります。
なお、自ら自動車を運転して行う営業活動の場合に、自動車運転が本来業務ではないので、業務そのものが裁量的なため労働時間のカウントが困難で、みなし労働時間制の適用を受けるケースであっても、その間は業務の遂行中であることには変わりありません。
よって、その途中で発生した交通事故は当然業務上災害となります。労働時間のカウントが困難だからといって(そのためみなし労働時間制の特例を受ける)、業務上災害の認定における業務遂行性が認められないわけではありません。
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取り扱う商品や地域によっては自動車で営業先を回ることも多いでしょう。
そんなとき、タクシーやトラックのドライバーの労働時間マネジメントとついごっちゃになりがちです。
事業場外労働のみなし労働時間制の適用範囲をいまいちど、確認していただく機会になればと思います。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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