「うちの会社では、コレコレこういうルールでこうやっているの。早く慣れてね(^^♪」
10月に中途入社したばかりのAさん、職場の先輩からいろいろ説明を受けているところです。ただ、「職場のルール」について前の会社とはずいぶん違う点もあり戸惑っています(新卒で入った会社のルールを「常識」だと思っていることは多いですよね)。
このような「職場のルール」、実際上の取扱いが職場や会社との関係において、規範化し法的な拘束力が問題となるものをいわゆる「労働慣行」と呼びます。
そこで今回は、労働慣行として法的効力が認められるのはどんな場合なのかについて、詳しく確認していきたいと思います。
労働慣行が成立するのはどんなとき
労働慣行とは、企業社会一般において、またはその企業のなかで、事実上の制度や取扱いとなって、それが反復継続して行われていて(慣行的事実があって)、会社と社員の関係において普遍性と規範意識(ルールを守ろうとする意識)によって支えられ規範化(権利・義務的効力がある)している一定の事実をいいます。
労働慣行として法的効力が認められるには、下記の事実が必要となります。
- 事実上の取扱いや制度として考えられている
- 反復して継続的に行われている
- その取扱いや制度を一般の社員も所属長も認識している
- 就業規則の制定・変更の権限のある経営者が明示している、または黙示的に是認している
- 社員も会社もそれに従っていて、「ルール化」(規範化)している
上記1.~5.の5つの要件をすべて充足するような、職場における事実上の取扱いや制度があれば、それがいわゆる労働慣行と認められます。
具体的にはどうなる
具体的にどのようなものが労働慣行と認められるのでしょうか。
判例上、労働慣行と認められる例をみていきましょう。
(↓記事のレイアウト上、空白スペースになっていますが、下記に続きます、スクロールしてください<(_ _)>)
- 退職金規程はないが、過去に何回も退職金を支払っており、その内容は退職者には基本給プラス諸手当に勤続年数を乗じた額の退職金を支払うという慣行
- 55歳の定年退職制度があるが(※注:当時)、実際には定年退職扱いとせず引き続き特段の欠格事由のない限り、社員を直ちに嘱託社員として再雇用することが常態となっており、過去何人もそのような取扱いを受けている場合における再雇用制度の慣行
- 高校においてテスト日の午後は教職員が自由に下校し、あたかもいわゆる半日勤務制と同じようになっている場合のテスト日の午後から帰宅の慣行
会社や職場の一般的な社員なら誰でもそのような事実上の制度や取扱いがあることを知っていて、会社も異議を述べずに従っているという状況になっていると、労働慣行が成立するのは先にお伝えした通りです。
ですが、それが公序良俗や強行法規に違反するものであれば、労働慣行として効力はありません。いくら事実が積み重ねられてきたとしても、強行法規に反するようなもの法的な効力は認められません。
労働基準法や労働安全衛生法など労働条件に関する規定は、ほとんどが強行法規なので、これらの法令に反する慣行は効力を持たないということになります。
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職場や会社で成立していると認められる慣行があっても、それが時代に合わなくなっていたり、会社側からすれば不合理とみられるものである場合はどうでしょうか?(法的な効力はあるのか)
これについて、会社側が「これは悪労働慣行だ」ということで認めない意思をはっきり示している場合は、規範意識(ルールを守ろうとする意識のこと)は成立せず、法的効力は認められません。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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