「会社が解雇するとき“あなたを解雇します”っていう意思表示が本人に到達しないと効力は発生しませんよね。そのとき解雇の理由も伝えないと無効になっちゃうんですか?」
「・・・・・ウッ(;゚Д゚)」
人事部に配属されて半年たったBさん、知識も増えてきたので質問攻めに合う先輩はタジタジです。
Bさん曰く、注意を繰り返しても勤務態度など全く改善されないので解雇という事態に至ったのに、「あなたのこういうところが悪いからですよ」と理由まで通知しなければならないのなら相当骨の折れるミッションだ・・・と感じたとのこと。
そこで今回は、解雇理由を本人に通知しなければ解雇の効力に影響を与えるのか、詳しく確認していきたいと思います。
解雇理由の通知について
会社が社員を解雇するにあたって、解雇理由を本人に明示しない解雇は有効なのかという問題があります。
これについて最高裁では、下記の旨を判示しています。
- 解雇理由を明らかにしなかったとしても、解雇理由にはこれを解雇される本人に通知しなければならないという根拠はない
- 解雇理由の告知のない解雇も有効である
労基法第22条1項(退職時等の証明)では、「社員が、退職の場合において、試用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金または退職の事由(退職の事由が解雇の場合はその理由を含む)について証明書を請求した場合は、会社は遅滞なくこれを交付しなければならない」との旨を定めています。
これについても、社員から請求があった場合であって、なお退職の事由が解雇の場合には、社員から解雇理由についてまでも証明を求められたときに解雇理由を明示することが必要とされているものです(←逆に、社員が請求しない事項を記入してはダメ)。
社員を解雇する場合には、会社に「必ず解雇理由の告知をしなさい」と義務付けたわけではありません。
実務的にどうなる?
社員を解雇する場合、解雇理由の告知が会社に義務付けられているわけではないのは、前段でお伝えしたとおりです。
ですが、もちろん会社として、解雇の意思表示とともに解雇事由を告知することは適切といえます(←告知する解雇理由は簡潔でも構いません)。雇用保険の離職証明書における「解雇理由」とも関係してくるからです。
解雇理由を本人に通知するからといって、(前段でお伝えした)従来の判例等の考え方が変更されるものではありません。解雇事由の告知のない解雇もそれだけで無効にはならないということです。
ただし、下記の旨の判例があるので注意を要します。
- 就業規則に会社が社員に対して解雇理由を明示する旨を定めている場合を除いて、解雇理由を明示しなかったとしても解雇の効力に何らの影響を及ぼさない
まとめると、就業規則に「会社は社員を解雇する場合には理由を明示して行う」といった旨を規定している場合には、これが解雇手続きとなるため、それを履行しなかったときは手続き違反の解雇として無効となるおそれがありますが、それ以外は影響がないということになります。
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「雇用保険の離職票が発行されるのに、(社員から請求されたら)わざわざ退職時の証明書を交付しないといけないの?」・・・退職時の証明書についてギモンを持たれる方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、雇用保険の離職票は、ハローワークに提出する書類であるため、退職時の証明書に代えることはできません。
なお、退職時の証明書の請求権の時効は、退職時から2年と考えられています。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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