いくら注意しても勤務態度が改まらない社員に、こっちがギブアップしそう。解雇も視野に入れるべきレベルだと思うけれど、就業規則の解雇事由にある「勤務態度が著しく不良」ってどのくらいのことをいうの? (新人が配属された部署の上司 談)
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社員側の事由による普通解雇の解雇理由としては、勤務成績や勤務態度等の不良、精神又は身体の疾病又は障害、職務上の命令違反、無断欠勤や職務懈怠その他の職務上の義務不遵守、経歴詐称、職務上又は職務外の非違行為・・・などを理由とするものがあります。
解雇は社員の生活に与える影響が大きいため、「勤務態度の不良」といっても主観的であってはいけないと悩まれる上司の方も多いようです。
そこで今回は、勤務成績や勤務態度不良による場合の解雇事例について、詳しく確認していきたいと思います。
解雇事由:勤務成績や勤務態度不良による場合とは
社員の勤務成績や勤務態度が著しく劣悪であって、社員として労働契約の継続が難しいときには普通解雇も有効となります。
ただし、「社会通念上相当と認められる」対応をしていることが必要です。解雇は、継続的な労働契約関係を終了させ、社員の生活の基盤を失わせるという意味で、社員に重大な不利益を与えるものだからです。
たとえ、社員の方に労務提供の能力や適格性に問題アリの場合であっても、マネジメントの立場にある上司が放任や黙認をしないで指導し、再三注意し、改善に努めていることが前提となります。
(専門性のある職種なので)その高度な専門性を見込んで採用されたというような場合では話は別ですが、能力や適格性の欠如が著しく、その回復や向上の見込みがないというような事情がなければ解雇を有効として認めないというのが、多くの裁判例にみられる傾向です。
具体例で確認すると
社員の勤務成績や勤務態度不良について、解雇が有効として認められた事例を確認していきましょう(判例による)。
【事例1】
・無断欠勤、上司の指示に対する違反、職場の同僚に対して悪影響を及ぼす発言や常軌を逸した行為がたびたびあった
・「誓約書」として念書をとった後、何らの改善もみられず、更に行為が繰り返された
・就業規則に定める「勤務成績が著しく悪く、向上の見込みがないと会社が認めたとき」に該当し、普通解雇が有効とされている
【事例2】
・派遣先において(派遣社員が)遅刻、欠勤が多く協調性を欠き派遣会社に対する信用、営業成績に重大な影響がある
・得意先から勤務態度不良を理由として、(派遣社員の)引取を求められる
・上司の再三の注意もきかない
・配転させようにも、引き受ける職場が他にない
・就業規則の「勤務成績または能率が不良で就業に適さないと認められるとき」に該当し、普通解雇は有効とされている
【事例3】
・仕事上のミスが非常に多く、これに対する上司の度重なる改善の指示に従わないばかりか、改善の熱意に欠けている
・勤務成績、能率が不良で、職場内での協調性に欠け、他の同僚と協力して業務を遂行する意思を持ち合わせていない
・上司の人格攻撃をしばしば行う
・会社が再三の注意をし、専務の直属下で努力する機会を与えるなどの配慮をしているにもかかわらず、自分の事務処理の誤りを率直に反省し改善する態度が伺われないこと等から、就業規則の「勤務成績又は能力が不良で就業に適さないと認められた場合」等を適用し、解雇したことはやむを得ない。
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本文中の事例では、いずれも普通解雇が有効とされていますが、「上司の再々の中注意」「上司の指示」というように、上司や所属長の注意や社員の不適格状態に対して改善の指示といった是正努力がなされていることがポイントとなります。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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