販促キャンペーンがあるたびに、うちの営業部員をスーパーやデパート、大型量販店に“派遣”している。ある部員に「人材派遣とうちの店員派遣はどう違うんですか?」と聞かれたけれど、そういえばどう違うんだろう? (メーカー勤務 営業部リーダー談)
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自社製品の販売促進のための店員、宣伝要員、説明員として、代理店など他社の職場で他社の社員と混在して働く・・・というのは、セールやフェアなどの機会でよくあるでしょう。とはいえ、人材派遣との違いを問われても返答に詰まることも多いかもしれません。
社員の「派遣」とひとくちにいっても、その態様や形態はいろいろあるので、単なる言葉づかいだけで区別できないからです。
そこで今回は、店員派遣・代理店派遣と労働者派遣との差異について、詳しく確認していきたいと思います。
まずは労働者派遣の形態を確認
「派遣」といわれているものの中には、大きく分けて2つのものがあります。
ひとつは労働者派遣法に定める「労働者派遣」であり、もうひとつは企業の中の人事異動の形態としての「他社派遣」です。
ひとつめの「労働者派遣」とは、自社の雇用する社員を、その雇用関係を維持しながら他社の職場に赴かせて、他社の指揮命令を受けてその他社のために業務に従事させることをいいます。
自社の雇用する社員(派遣社員)を「労働者派遣契約」によって他社に派遣して、業務に就かせるものなので、派遣社員を他社に雇用させることを約束して、業務に従事させるものでないことが要件とされています。
人事異動としての「他社派遣」とは
人事異動としての他社派遣とは、店員派遣や代理店派遣を中心とした、「自社業務派遣」というかたちで行われる企業内の人事異動のうちのひとつです(たとえば、メーカーが自社の社員をクレーム担当者として販売代理店へ派遣する、など)。
つまり他社派遣とは、「自社の業務命令によって自社からの指揮監督を受け、自社のための業務を他社において遂行する」ものをいいます。
よって、「自社と他社との労働者派遣契約により、他社に派遣されて、他社の指揮命令を受けて、他社に使用され業務を提供する」労働者派遣とは異なります(労働者派遣は雇用と使用が分離する形態)。
他社派遣の場合は、指揮命令者が雇用主であり、雇用者と使用者が一致する点において、法律上明らかに労働者派遣とは区別されるものであって、労働法上問題のない形態となります。
労働者派遣と他社派遣との根本的な違いをまとめると、下記のようになります。
- 労働者派遣・・・派遣先に労働力の使用収益権限を賃貸し、派遣先が指揮命令する(雇用と使用の分離)
- 他社派遣・・・派遣された社員を派遣元が直接指揮命令する(雇用と使用の一致)
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他社派遣についてもう少し説明しますと、その形態は下記のように2パターンあります。
①他社の中に自社の駐在員等として存在する形態。他社の中に自社の作業所、駐在所、連絡所といった、あくまでも自社の事務所的なものが小規模であっても存在し、そこへ赴いて仕事する。
②長期出張と同じ形態のもの。自社製品の販売のための店員等として、自社のために自社の業務として他社内で他社の社員と混じって、協同して働く形態。他社の指揮命令は受けず、あくまでも自社の指揮命令を受ける。
①と②のいずれも「雇用と使用の一致」があるもので、派遣法上の「労働者派遣」にはあたりません。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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