この部署ではプロジェクトが完了するまで出向社員、派遣社員、そしてうちの社員が一緒になって働いている。よその会社から来てもらっているのは出向社員も派遣社員も同じだけど、法律的には全然違うのでマネジメントに気をつけるように、と人事部からお達しが。・・・具体的にはどう違うの? (プロジェクト推進リーダー 談)
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出向とは、第三者の会社に出向元の人事異動により派遣されて第三者(出向先)のために働くものですが、見た目としては人材派遣と類似している面があります。
ですが、出向と労働者派遣とは根本的に違うものなので、人材マネジメントのあり方もおのずと異なってきます。
そこで今回は、出向と労働者派遣との人材マネジメント上の具体的な違いについて詳しく確認していきたいと思います。
出向と労働者派遣の違い
出向は、出向元と出向先の親子、企業グループ、業務提携、取引関係、教育協力・・・などの企業間の関係から、企業間の人事異動として行われるものです。
両会社間による社員の出向に関する契約によって、出向元での社員としての地位を保ちながら、出向先とも新たな雇用契約関係を発生させて出向先の社員としての地位を取得し、相当の期間にわたって継続的に、出向先に勤務する形態です。
これに対し労働者派遣は、派遣先との間には全く雇用関係が発生しません(派遣先の社員としての地位は持たない)。そもそも事実上の指揮命令の関係にとどまる場合に限って「労働者派遣」と認められるものです。
出向は出向先の社員としての地位を有し、労働者派遣の場合では派遣先の社員としての地位を全く有しないという点で明白に異なり、法律的な差異があります。
人材マネジメント上の違い
人材マネジメント上の主要項目について法律的にみた、出向と労働者派遣の違いは下記のようになります。
(実務上の取扱いで典型的に異なるのは「36協定」についてです。
↓要チェック項目です)
【社員としての地位】
・出向・・・出向先と出向元の両方にある
・労働者派遣・・・派遣元にある(派遣元にしかない)
【誰に対して労務を提供する義務があるのか】
・出向・・・出向先に対して労務を提供する義務がある
・労働者派遣・・・派遣元に対して労務を提供する義務がある(=派遣先への欠勤は派遣元に対する労務提供義務違反となる)
【賃金を支払う義務があるのは】
・出向・・・出向元と出向先
・労働者派遣・・・派遣元
【就業規則(労働時間、休日、休暇等の勤怠関係)の適用】
・出向・・・原則として出向先のものが適用される
・労働者派遣・・・派遣元のものが適用される
【36協定】
・出向・・・出向先の36協定のなかに出向社員の人数も含めて協定、届出を行う
・労働者派遣・・・派遣元で協定、届出を行う
【指揮命令権】
・出向・・・出向先にある
・労働者派遣・・・派遣元にある
【人事労務の管理権限】
・出向・・・出向元と出向先
・労働者派遣・・・派遣元
【懲戒処分の権限】
・出向・・・出向元と出向先(懲戒解雇の権限は出向元にある)
・労働者派遣・・・派遣元
【解雇の権限・定年の取り決め】
・出向・・・出向元にある
・労働者派遣・・・派遣元にある
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↑上記の「36協定」の項目で、「なんで派遣社員が派遣先の36協定の人数に含まれないの?」とギモンに思われた方もいらっしゃるかもしれません。
派遣社員は派遣先の職場の社員にはならないので、そもそも派遣先の36協定の適用を受けない立場にあります。派遣先の36協定の「部外者」ということでカウントされないのです。
派遣元所属の社員として、派遣元で36協定の締結&届出を行っていなければ、派遣先で時間外・休日労働を行うことはできません。見た目は似ていても、出向と労働者派遣の違いを押さえておきたいですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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