うちの就業規則には、懲戒の項目に「諭旨解雇」というものが書いてある。「懲戒解雇相当の事由で本人が反省しているときは退職届を提出するよう勧める」とのこと。ん?どういうこと?反省すればフツーの退職扱いになるの?
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多くの会社の就業規則において、諭旨退職や諭旨解雇という懲戒処分制度が定められていると思います。
諭旨解雇は懲戒解雇よりもワンランク軽減した解雇処分ですが、「懲戒処分とどう違うの?」「処分を一段階軽くすることに意味はあるの?」など、「結局どういうこと(;・∀・)?」とギモンに思われることは少なくないのではないでしょうか。
そこで今回は、諭旨解雇とはどういうことなのか、懲戒解雇とはどう違うのかについて詳しく確認していきたいと思います。
まず懲戒解雇とはどういうこと?
懲戒解雇とは、社員の秩序違反行為に対する制裁(ペナルティー)をいい、懲戒処分として労働契約を解除して当人を会社の外へ排除するものです。
社員は、会社に雇用されることによって、企業秩序の維持を図るよう義務を負っているからです。
解雇して社員の身分を失わせる懲戒処分行為なので、その事由は下記の例のように、最も重大な事案、悪質な場合に科せられるものとして考えられています(判例による)。
- 客観的にみて企業の秩序維持または生産性の向上維持に反するもので、その社員を企業内に留めておくことが社会通念上期待できないような行為をした場合
- 欠勤日数の長さ、欠勤理由、届出できなかった事情について、信義則上要求される義務を尽くしたかどうか、本人の企業における地位・役割などの点について考慮したうえで、その者を企業外に排除しなければ企業秩序が維持できない程度のものであった場合
- 会社との信頼関係が破壊され、その結果、雇用関係の存続を難しくする場合
諭旨解雇(諭旨退職)とはどういうこと?
諭旨解雇という処分は、懲戒解雇処分に該当する事案ではあるけれど、本人がその非を認め、会社が「退職を勧告し、一週間以内に退職届を出さないときは懲戒解雇に処する」というものです。
この処分の特徴は「退職金の支給を伴う」点にあります。
つまり、重大な事案であるけれど、本人が反省の姿勢を示したり、謝罪の気持ちがあるといった場合に、懲戒解雇では退職金が全額不支給となってしまうので、その気持ちを汲んで退職金を一部不支給としたり、自己都合退職として支給するという扱いになります。
「懲戒解雇に相当する事案があったのに、なんと寛容な処遇( ゚Д゚)」と思われるかもしれませんが、これは退職金の全額不支給にまつわる判例に由来します。つまり、退職金は賃金後払い的な性格があるので、退職金を全額不支給にするには、その事案がたとえ懲戒解雇が有効となるものであっても、永年の勤続の功を抹殺するような重大、悪質、著しい背信的な場合でなければならないと考えられているためです。
また、たとえ「諭旨退職」として退職という言葉が使われていたとしても、懲戒処分の一種であることには変わりがありません。処分を受ける社員が退職届を出したとしても、企業秩序違反に対して制裁として科せられる懲戒処分だということです(諭旨退職処分としての手続き上の退職届として扱われる)。
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「本人の反省の気持ちや事情をくみ取って、諭旨退職処分を自己都合退職にすることはできないの?」
社員が違反行為を反省し、自己都合の退職届を提出した場合に、本来は懲戒処分としての諭旨退職処分とするところを懲戒処分とはしないで、会社として自己都合退職として取り扱うことも可能です。そして、この場合は懲戒処分ではありません。
ご参考になれば幸いです。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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