遅刻ばかりする社員に何度注意しても反省の色がない。減給の制裁を行うことになったが、遅刻の回数があまりに多く、給与計算の担当者から「毎月ミスしないかヒヤヒヤするので賞与でまとめて減給するのはダメなんですか」との声が。そのほうがいいのかな・・・
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事務処理を滞りなく進めるため、労基法で厳しく制約されている「減給の制裁」を賞与でまとめて行ってもいいのかな?と判断に迷う人事課のリーダーです。
本人に原因があるとはいえ、減給の制裁は社員に対する経済的なダメージが軽いものではないので、事務の効率を優先させていいのか、との疑問があるためです。
そこで今回は、事務処理の効率のため減給の制裁を賞与でまとめて行ってもいいのかについて、詳しく確認していきたいと思います。
減給には労基法の規制がある
労基法では、就業規則で定める制裁(ペナルティー)のなかでも、減給の制裁を定める場合において、減給の額があまりに多額となり社員の暮らしを圧迫することがないように、減給の最高限度が定められています。
その限度とは、「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」としています。「総額の10分の1」と「日額の半額」というのは、両方を満たさなければなりません。
なお、「1賃金支払期における賃金の総額」とは、その賃金支払期に対して「現実に」支払われる賃金の総額をいいます。つまり、1賃金支払期に支払われるべき給与の額が遅刻や早退、欠勤等のために通常よりも少額になったときは、その少額となった給与総額を基礎としてその10分の1を計算することになります。
(冒頭の例でいうと、遅刻による不就労分を差し引いてから「減給の制裁」を行うことになるのでたしかに給与計算は煩雑になりますよね( ゚Д゚))
減給の制裁を賞与でまとめてもいいの?
労基法では、制裁として賞与から減額することについて禁止していませんが、賞与も賃金であるので、前段でお伝えした減給の制裁に対する制限に該当するとしています。
よって、減給の総額は賞与の総額の10分の1を超えてはならないことになります。
なお、遅刻や早退、欠勤によって社員が働かなかった(労働の提供がなかった)時間に相当する賃金だけを差し引くことは、労基法の定める制裁としての減給にあたるものではありません。
言い換えると、ノーワークノーペイは当然の結果であって減給の制裁ではないということです。
ただし、遅刻、早退の時間に対する賃金額を超える減給は制裁とみなされるので、減給の制裁に対する制限の適用を受けることになります。
また、賞与について業績や評価による査定減額は、労基法上の減給の制裁には該当しません。
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以上のように、法律上は減給処分を賞与でまとめて行うことができます。
ですが、実務上の取扱いを考えたとき、減給処分の事案発生(冒頭の例でいうと度重なる遅刻)から時間を置くことなく処分したほうが、本人の反省を促す効果が高いともいえます。
難しいところですが、処分の効果と事務処理の効率のバランスを考えて、実務を行っていきたいですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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