営業部のA課長は妊娠中。でも担当のプロジェクトが山場を迎えているようで、先日も深夜まで仕事をしていたらしい。責任感があるのは頼もしいけれど、本人の身体が心配なので人事部としてストップをかけようか・・・(中堅の人事担当者 談)
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労基法では母性保護の観点から、労働時間等に関する制限が規定されています。妊産婦(妊娠中の女性と産後1年を経過しない女性)に対する労働時間等の制限は、あくまで本人から申し出があってはじめて会社に実施する義務が生じます。
では、妊産婦が管理職である場合はどのように考えるべきでしょうか。そもそも管理職には、労基法が定める労働時間、休憩、休日についての規定が適用されないからです。
そこで今回は、妊産婦である管理職が深夜残業をしている場合の会社がとるべき対応について詳しく確認していきたいと思います。
妊産婦に対する労働時間等の制限とは
妊産婦が請求した場合には、会社は、時間外労働、休日労働又は深夜業(午後10時から午前5時までの間の就業のこと)をさせることはできません。また、職場で変形労働時間制がとられる場合にも、妊産婦が請求した場合には、1日及び1週間の法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて働かせることはできません。(労基法第66条)。
ここでポイントは、この措置はあくまで妊産婦から請求(申し出)があってはじめて会社にそれを実行する義務が生じるという点です。
よって、本人からの申し出がない限りは、時間外労働や休日労働等を行わせても法違反にはなりません。
妊産婦の申し出は、時間外または休日労働についてだけ、深夜業についてだけ、それぞれについての部分的なものも認められます(←妊産婦の身体等の状況の変化に伴って内容の変更も認められます)。
会社としては、申し出があった範囲でのみ措置を講じればOKということです。
妊産婦の管理職に会社はどう対応するか
経営者と一体的な立場とされる「労基法第41条の管理監督者」は、労働時間、休憩、休日に関する労基法の規定が適用されないので、前段でお伝えした妊産婦の労働時間等の制限も適用除外となります。
つまり、管理職(労基法第41条の管理監督者)の妊産婦は、会社に対して「時間外労働、休日労働をしません」との申し出はできないということです。
ただし、労基法の適用除外となるのは時間外、休日労働についてだけであり、深夜業については適用除外となりません。
そのため、「深夜業はしません」との申し出を管理職の妊産婦が行った場合は、会社は深夜労働を行わせることはできません。
まとめると、妊産婦のうち管理監督者に該当するものには、労働時間、休憩、休日に関する労基法の規定は適用されませんが、深夜業について本人が請求した場合にはその範囲で制限されることになります。
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管理職の妊産婦について、法律的には以上の内容となりますが、妊娠中は体質や体調の変化が著しいので身体への影響は少なくありません。
プロジェクトが山場を迎えているとはいえ、会社としては身体への負担を与えることのないよう配慮し、能力を発揮できる環境を本人と相談しながら考えたいですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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