うちの工場は最寄り駅から遠い。送迎バスを導入しようか、ん?会社の専用交通機関だから乗車している時間は労働時間になるのか?それなら、同じ方面から通勤する社員はマイカー通勤者に便乗すれば労働時間にならないのかな・・・(メーカー勤務 人事担当者 談)
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労基法の規制する労働時間とは、「会社の指揮命令下で仕事をしている時間」をいうので、「会社の提供する」専用交通機関(送迎バス)を利用している時間は労働時間にあたるのか?とギモンの人事担当者さん。
送迎バスの時間が労働時間になるなら、わざわざ送迎バスを導入しなくてもマイカー通勤者に便乗するよう割り当てると問題は発生しない、と考えていますが、果たして・・・?
そこで今回は、会社の送迎バス乗車中は労働時間になるのか、またマイカー便乗についてはどう考えるのか、詳しく確認していきたいと思います。
送迎バスの時間はどうなる?
会社の提供する専用交通機関を利用中、その利用に起因する災害が起きた場合は「業務上の災害」とされています。
ですが、これは会社が提供している交通機関という物的管理に起因する事故についての取扱いであって、その利用中の時間までが労働時間になるということではありません(送迎バスで工場まで通勤するその時間が労働時間になるということではない)。
送迎バスといった通勤専用の交通機関の利用中は、その交通機関の中に拘束されてはいるものの、それは社員が選択した通勤方法上の拘束です。
社員が労働契約に基づいて会社に提供することを約束した「労働力」を会社の支配下にまで運んでいる(持参している)時間なので、まだ会社の指揮命令下にはありません。ゆえに労働時間とはなりません。
マイカー便乗の時間はどうなる?
社員の間で都合をつけあって、お互いの好意によってマイカーに同乗して通勤する場合には、通常の通勤と変わらないので、その通勤時間は労働時間にはなりません。
ですが、会社が社員のマイカーを通勤に使うように指示して、同一方面から通勤する社員にマイカー通勤者を割り当てて、誰がどの社員のマイカーに乗車するかを指定して配車した場合には、前段でお伝えした送迎バス通勤の場合と同様に会社の専用交通機関の利用となります。
会社が社員の通勤確保のため、会社においてそのマイカーをその時間を限って借り上げたことになるからです。
この場合、交通事故が起きたときの災害は業務上災害となりますし、運転者である社員が第三者に加害した場合には、業務執行中の災害として会社に使用者責任が発生します。また、会社が運行供用者として損害賠償責任を負うことになります。
とはいえ、乗車時間が労働時間にあたるかは別問題です。前段の送迎バスの場合と同様、実態としては交通機関利用の通勤であって、単なる乗客として乗っているのと同じなので、同乗の社員は労働時間にあたりませんし、運転者もマイカー通勤時間となります。
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会社施設の門に入って、出るまでの(会社施設の敷地内にいる)時間は会社の拘束下にある時間であっても、労務提供のための指揮命令下になく労働から解放されている休憩時間などは労働時間にあたりませんよね。
つまり、拘束時間のすべてが労働時間ではないので、送迎バス等の時間についても誤解なきようお願いします^^
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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