「毎週月曜日は始業の9時から定例会議をやっているのですが、参加メンバーのフレックスタイム社員がこの頃毎回サボるようになり、会議の雰囲気も悪くなって困っています」
半年前から営業部でフレックスタイム制を始めたところ、残念なことに自分勝手に振る舞う人が出てきてしまいました。
こんな社員には注意するのが当たり前というところですが、「フレックスタイム社員にコアタイムでもないのに時刻指定で勤務を命じていいのか?」との疑問から、強く言って法律違反にならないのだろうか・・・と判断に迷う上司の方の心情もわかります。
そこで今回は、定例会議を毎回サボるフレックスタイム社員に会社としてどのように対応すべきなのかについて、詳しく確認していきたいと思います。
フレックスタイム制の運用
フレックスタイム制とは、一定期間のなかで一定時間数(契約時間)働くことを条件として、社員が1日の仕事を自由に開始し、終了できる制度です。
フレックスタイム制は、始業と終業の両方を社員が自分の意思で決められることを要件としていて、始業時刻または終業時刻のどちらかだけを社員の決定に委ねるというのではダメです。
フレックスタイム制において、冒頭の例のように、会議をサボる人が出てきた際に、会社として気になるのは次のような事柄ではないでしょうか。
- (定例会議のある)月曜日だけ定型勤務にできないか?
- 会議、取引先との打ち合わせがあるときは、時刻指定で勤務させることはできないか?
- 時刻指定で勤務させる場合は社員の同意が必要か?
そもそもの前提として、フレックスタイム制においても社員には時刻指定の業務命令がなくても、会議や打ち合わせなどに間に合うよう自己管理して出勤すべき誠実勤務義務があります。
もちろんフレックスタイム社員にコアタイム以外の時刻指定勤務を強制することはできませんが、かといって会議や打ち合わせのサボリが繰り返されるのであれば、職務怠慢として懲戒処分の対象ともなります。
自分勝手な行動にどう対応する?
前段でお伝えしたように、フレックスタイム制だからといって、業務に支障をきたすような選択をすることは職務怠慢として許されません。
そこで、フレックスタイム社員に対して業務に支障がないよう自己選択による勤務を求めることは差し支えありません。
ただ、フレックスタイム制のままフレキシブルタイムに出勤時刻や居残り時刻を業務命令で指定していいのか?という問題は残ります。
フレックスタイム制では始・終業時刻の両方を本人の決定に委ねなければならないので、フレキシブルタイムが極端に短い場合は(←コアタイムの開始から終了までの時間と標準となる1日の労働時間がほぼ一致しているなど)始・終業時刻を本人の決定に委ねたことになりません。
また厚労省の見解では、たとえば月曜日は通常勤務にするというような「コアデー」を定めたり、特定の日に出勤時刻指定を行うのは、本人の同意がない限りダメということです。
そこで、フレックスタイム制における自己選択を「自分の思うようにやっていい」と勘違いし、業務に支障をきたすことを繰り返す者には、フレックスタイム制を解除し、通常勤務を命じることが会社の労務指揮権の行使として認められます。
フレックスタイム制もひとつの労働時間制(働く要件)なのであって、「フレックスタイムで働く権利を社員が持っている」ということではないからです。
**
【フレックスタイム制で会社としてキニナル点のまとめ】
■(定例会議のある)月曜日だけ定型勤務にできないか?→フレックスタイム社員本人の同意があればOK
■会議、取引先との打ち合わせがあるときは、時刻指定で勤務させることはで きないか?→業務に支障がないよう自己選択による勤務を求めることは差し支えない
■時刻指定で勤務させる場合は社員の同意が必要か?→フレックスタイム社員本人の同意が必要
フレックスタイム制は、生活と仕事のバランスを図って効率的に働くことがそもそもの目的ですから、本来の目的から逸れることのないように職場で理解を深めたいですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
■提供中のコンサルティング
■顧問契約・単発のご相談を承っています
■役に立つ無料コンテンツ配信中
■ブログの過去記事