「6年目のパート社員から無期転換の申込みがなく、契約期間の満了日も近いのに手続きを進めようもないのでヤキモキしています。今後のことを考えて、無期転換の申込期限を設けるのはダメですか?」
会社としては人員管理のため後任者の採用なども考えないといけないので、滞りなく仕事を回すためにもいつまでもこのパート社員の意思表示を待っていられない・・・というのがホンネでしょう。
とはいえ、法律上6年目の契約期間満了日まではいつでも無期転換の申込ができることになっていますし、申込をするかどうか、またいつ申込を行うのかは、本人の自由となっています。
そこで今回は、無期転換の申込期限を設定することに法律的に問題がないかどうか、詳しく確認していきたいと思います。
無期転換申込権の行使
無期転換申込権は、有期労働契約が会社との間に継続して、通算した期間が5年を超えた6年目に発生します。6年目の有期労働契約の期間中であれば、いつでも行使することができます。ただし、合理的な手続きの規制があれば従う必要があるとされています。
6年目の有期労働契約期間中に行使しないとこの無期転換申込権は当然に消滅しますが、それに引き続いて次の有期労働契約を更新したら、その時にまた新しい無期転換申込権が発生します。
このような無期転換申込権の発生要件と行使(申込)上のルールが労働契約法で定められています。
無期転換申込権を取得したパート社員であっても、無期転換を申し込む義務はありません。また、申し込むかどうか、いつ申し込むかは本人の自由にゆだねられています。働き手の自主性の尊重、というのが法の趣旨です。
というのも、近年は働く人の意識が多様化しており、「正社員のように長時間会社に拘束される働き方ではなくフレキシブルに働きたい」との思いから、非正社員を選択する人も増えてきているためです。
無期転換の申込期限
冒頭の例のように、企業の人員管理の必要性から無期転換の申込期限について、たとえば「無期転換の申込は6年目の有期労働契約が満了する日の1か月前までにしてくださいね」という旨を就業規則に定めることは、問題ないと解釈されています。
本人が無期転換を申し込まないで、その契約期間中に申し込みを留保した場合でも無期転換申込権は残るため、次期契約時に申込権の行使があるかもしれません。
会社としても本人にしても不安定な状態が続いてしまうことになりますが、それは望ましいことではありませんし、そもそも法の趣旨にも合わないからです。
とはいえ、「契約期間満了日の1か月前までに」と申込期限を設けても、法律上はこの期限を過ぎてしまっても契約期間満了日まではいつでも申込権が行使できることになっています。
そのため、実務上は1か月前になった時点で本人の意向を確認する手続きが必要となるでしょう。
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「パート社員や契約社員は、繁忙期の一時的なマンパワー」と、パート社員・契約社員の活用について割り切って考えている企業もあるでしょう。そういったケースでは「無期転換制度の対応はどうしよう?」と悩まれるかもしれません。
この場合、あらかじめ有期労働契約の更新回数を制限したり、雇用期間の上限を制限して対応することになります。
働き手にしても、前もって決まっていることなら納得して働けますし、ライフプランもたてやすいですよね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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