「パート社員の前の有期労働契約と次の有期労働契約期間との間に、契約のない期間があっても契約期間は通算しないといけませんか?」
無期転換の申込とは、5年を超えて有期労働契約を継続更新した場合には、その働き手の申し込みよって、雇用期間の定めのない労働契約に移行するものです。
つまり、有期労働契約が会社との間に継続して、通算した期間が5年を超えた6年目に無期転換申込権が発生します。契約の通算の仕方がとても重要になってくるので、冒頭のようなご相談をいただきます。
このような「契約の空白期間」については法律で定められており、クーリング期間といいます。
そこで今回は、無期転換申込権に大いに関係するクーリング期間について詳しく確認していきたいと思います。
クーリング期間ってどんなもの?
無期転換申込権は、「2つ以上の有期労働契約の期間を通算した期間が5年」に達した働き手が、5年で契約を終了するのではなく、その次の「6年目」に入る労働契約を締結したときに発生します。
有期労働契約を通算した期間によって、無期転換申込権を行使できるかどうかが決まるので、その通算の仕方が問題になります。
前の有期労働契約と次の有期労働契約との間に、契約のない空白の期間があれば、別々の労働契約となりますから、これを通算することは理屈に合いません。
とはいえ、その期間が1日でも空いていれば「別々の労働契約になるので通算しません」というのも問題なので、その空白の期間が短い場合は通算するのが合理的といえます。
そこで労働契約法では、前の有期労働契約と次の有期労働契約の通算が切り離され、リセットされる「契約の空白期間」の長さを定めています。これをクーリング期間といい、同法では原則としてこの期間を「6か月」としています。
クーリング期間の長さはどうなる?
労働契約法が定めるクーリング期間は、下記のようになります。
- 有期労働契約期間の通算が1年以上の場合・・・6か月、
- 有期労働契約期間が通算1年未満の場合・・・その有期労働契約期間に2分の1を乗じて得た期間(1月に満たない端数が生じたときは、これを1月として計算する)
この契約の空白期間があればクーリング期間と認められ、それ以前の有期労働契約期間は通算されず、リセットとなります(←逆に言うと、この期間の長さに達しない空白期間は通算されることになります)。
なお、有期労働契約期間が通算1年未満の場合(②のとき)、日単位の端数が生じることもありますが、このときは1月に切り上げます。同様に2分の1した後の期間に端数が出た場合も1月に切り上げます。具体例で確認してみましょう。
【例】クーリング期間の計算(←この長さに満たない空白期間は通算しないとダメ)
・有期労働契約期間が通算3月+10日の場合→4月に切上げ
4月×1/2=2月(クーリング期間)
・有期労働契約期間が通算4月+10日の場合→5月に切上げ
5月×1/2=2.5月→端数を切上げて3月(クーリング期間)
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↑本文で無期転換申込権の発生するときについてサラッと触れましたが、ここでおさらいしておきましょう。
【無期転換申込権が発生するプロセス】
- 通算契約期間が5年を超えて、
- さらに契約更新して6年目の有期労働契約を結んだ場合に(契約期間の長さは自由)
- 6年目に至る有期労働契約を結んだ日から、その有期契約が満了するまでの間に
- その有期契約期間の満了する日の翌日を就労開始日とする
- 期間の定めのない労働契約に転換する効力をもつ契約の申込権が働き手に発生する
クーリング期間は①のプロセスで関わってくることになります。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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