部下「自宅に仕事を持ち帰ってやるのは残業にならないのに、なんでテレワークだと通常業務の扱いになるんですか?」
上司「・・・・(たしかに・・・←心の声)」
自宅への持ち帰り仕事は労働時間にカウントされないのに、テレワークがカウントされるのはどうしてなのか・・・部下から質問を受けて言葉に詰まる上司。
「自宅で仕事を行う」ということで、両者は一見同じようにみえるかもしれませんね。ですが、ポイントとなるのは労基法上の労働時間についての定義です。つまり、「会社側の指揮命令下に置かれている時間として評価できるか?」という点が問われることになります。
そこで今回は、自宅への持ち帰り仕事とテレワークは労働時間の扱いでどのように違うのかについて、詳しく確認していきたいと思います。
自宅への持ち帰り仕事は労働時間にカウントされるの?
労基法上の労働時間とは、「会社の指揮監督下にあって仕事に従事する時間」のことをいいます。
社員が仕事を自宅に持ち帰ってやる場合(リモートワークで会社の指揮監督のもとにあるときは別です)、社員が業務の都合などで自発的に自らの意思で、会社の承認なく自宅に持ち帰ってやるのなら、自宅は私生活の場ですから会社の支配下にあるとはいえません。
よって、自宅への持ち帰り仕事は労働時間にカウントされません(もちろん残業にもなりません)。
なぜなら自宅での仕事は、もちろんそれは自宅でなければダメというわけではなく(会社帰りのカフェでもよく)、深夜にやっても早朝にやってもよく、お酒を一杯やりながらでもテレビをみながらでもよく、ソファに寝転がりながらでもよく、どんなやり方でやっても自由だからです。
つまり、自宅は会社の支配下にはなく、場所的な拘束も、時間的な拘束も、業務遂行方法の拘束もないので、自宅に持ち帰って仕事をやったという事実があったとしても、それを労基法上の労働時間としてカウントすることはできません。
ただし、自宅へ持ち帰って行った仕事について、労災保険の認定上これを業務時間と取り扱うことは、その業務の種類や性質などに照らして許されるところなので、混同しないよう注意が必要です。
テレワークとどう違うの?
悪天候で通勤への支障が予想されるとき、また最近では新型コロナウイルスの感染防止のためテレワークが実施されています。テレワークは働く場所によって、次の3つに区分されています。
- 在宅勤務(オフィスへ出勤せず自宅で仕事)
- モバイルワーク(外出先・交通機関の移動中に仕事)
- サテライトオフィス勤務(勤務先のオフィス以外にある拠点で仕事)
1の在宅勤務については、プライベートな生活の場である家庭を職場とするものなので、働く時間と日常生活の時間が混在せざるをえません。そのため社員本人の同意を必要とします。
さて労基法では、社員の入社時に絶対的明示事項を書面の交付により明示しなければならないとしており、「就業の場所・従事業務」はそのうちのひとつになっています(働く場所は社員にとって重要だからです)。
今いる社員にテレワークをさせるなら、労働契約の変更(就業場所の変更)をできる限り書面で示すことが、法律により求められています。新しく採用する社員に自宅でテレワークを行わせる場合は、入社時に就業の場所が自宅であることを書面で明示する必要があります。
よって、テレワークの場合は自宅持ち帰り仕事ではなく、「自宅という就業場所における労働」であり、そこでの労働時間制度が成立することになります(←イコール労働時間にカウントされるということです)。
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本文記事の内容を簡単にまとめると下記のようになります。
- 自宅持ち帰り仕事→就業場所内の業務遂行方法の問題(業務遂行方法が自宅で自由のため会社の管理監督下になく労働時間にカウントされない)
- テレワーク→就業場所の変更(就業場所が変更になるだけなので労働時間制度はフツウに成り立つ)
これで不意打ちの部下からの質問にもバッチリですよね(*’ω’*)
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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