年度末が近いので、部員には5日以上の年休を確実に取ってもらわないといけない。だが風邪、コロナ、インフルエンザでダウンする人が出て人手が足りずに、休んでほしい人に休んでもらいにくい状況だ。半休か毎日1時間ずつ時間休を取ってもらって、年休取得5日以上にもっていくか・・・?(とある商社の営業部長談)
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会社には、年10日以上の年次有給休暇が付与される社員に対して、年休日数のうち年5日の年休を取得させることが義務付けられています。
そのため上司としては5日以上に至っていない社員の年休取得と、業務の進捗具合の間で「半休と時間休が5日付与義務にカウントされるならなんとかなるかも?」と焦っています。
そこで今回は、そもそもの半休と時間休の取扱いの違いと、半休と時間休が年休の5日付与義務にカウントされるのかについて、詳しく確認していきたいと思います。
半休と時間休の取扱いの違い
日単位の年休を分割するという点で、半日単位年休(半休)と時間単位年休(時間休)に対する認識はともすればごっちゃになりがちです。
ですが、時間休は法律上の年休制度であって、一方の半休は法律上の制度ではありません。
もともと日単位の年休は「分割して付与することはできない」とされていましたが、解釈通達の変更によって、「半日単位で付与する義務はない」と改められました。
つまり、年休の取得単位は基本的には暦日単位ですが、会社の裁量によって半日単位の取得を認めることもできます。
言い換えると、社員が「半休を取りたいです」と言ってきても、会社は与える義務はないということであり、会社が認めるのであれば構いませんよ、という解釈になります。
なお、前述のとおり時間休は法律上の制度なので、労基法に定める導入手続きを踏むことが必要です。
半休と時間休が年休の5日付与義務に入るか?
年5日の年休を社員に取得させることが会社に義務づけられているので(対象となるのは年休が10日以上付与される社員)、社員ごとに年休を付与した日(基準日)から1年以内に5日について、取得時季を指定して年休を取得させなければなりません。
これは、会社が時季指定して取得させることの義務化であって、決して社員に強制を課するものではありません。社員自らが年休を取得した場合と、年休の計画付与が行われた場合は、その取得日数は5日の義務日数から控除されます。
年休の時季指定にあたっては、会社は社員の意見を聴く義務があり、できる限り社員の希望に沿った取得時季になるよう、聴取した意見を尊重するよう努めなければなりません。
それでは、本題の半休と時間休が年休の5日付与義務にカウントされるのかについてです。
半休については、社員の意見を聴いた際に半休の取得希望があった場合は、会社が年休の時季指定を半日単位で行うことは問題ないとされています。この場合、半休を0.5日として取り扱います。
時間休については、会社が年休の時季指定を時間単位で行うことは認められていません。
また、社員自ら取得した半休・時間休の取扱いについては、半休については0.5日として年休の5日付与義務にカウントされますが、時間休についてはカウントされません。
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「半休は5日付与義務にカウントされて、時間休はカウントされないってめっちゃややこしいやんか・・・」と思ってしまいますが、半休はあくまでも通常の1日単位を前提とする年休だからです(「日単位年休」のなかの任意の制度)。
ただ、子の看護休暇・介護休暇が時間単位で取得できるようになった時代ですから、時間休もカウントされるよう将来的には見直されるかもしれませんね。←現時点ではカウントされませんので要注意ですが(;´∀`)
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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