「正社員なら簡単に辞めてもらうのは法律的に難しいかもしれないけれど、パート社員ならいつでも辞めてもらえますよね?」
これは大きな誤解です。このように思われていることは多いかもしれませんが、実は逆なんです。
民法上は「期間の定めのある契約(パート)」は、会社はその期間中に原則として解雇できず、「期間の定めのない契約(正社員)」の場合はいつでも解雇できると規定されています。
とはいえ、雇用期間を定めて採用したパート社員の勤務成績がめちゃくちゃサイアクで、これ以上続けてもらうのはムリじゃないの・・・?といったケースもあるかもしれません。
そこで今回は、有期の雇用期間の途中でパート社員を解雇するにあたって、会社が気をつけなければならないことについて詳しく確認していきたいと思います。
期間途中の解約で会社が注意すべきこと
通常、パート社員は3か月や6か月といった、雇用期間を定めて採用するケースが多いでしょう。そんなパート社員の働きぶりが極めて悪質で、これ以上業務に耐えられない・・・と思われるとき、途中で解雇する場合もあるかもしれません。
また、雇用期間の途中で経営状況の変化により業務量が減少したため、途中で解雇するといったケースもあるでしょう。
ここで注意しなければならないのは、労働契約法第17条で「会社は期間の定めのある労働契約(有期労働契約)を、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間に社員を解雇することができない」との旨が規定されていることです。
ここでの「やむを得ない事由」とは、解雇権濫用法理における「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当」と認められる場合よりも、範囲は狭いと考えられています。つまり、期間満了を待つことなく直ちに雇用を終了せざるを得ないような、特別に重大な事由がなければダメだということです。
そもそも労働契約法第17条では「解雇することができない」旨を規定しているので、「やむを得ない事由」があるという判断を裏付ける事実の立証責任は、会社側が負うものとされています。
たとえ、社員との間で「契約期間中でも一定の事由によって解雇することがある」との合意がなされていたとしても、実際に行われた解雇について「やむを得ない事由」があるかどうかが、具体的な事案に応じて判断されます。
解雇無効で残りの期間の給料支払いは必要か
労働契約法第17条の「やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間に社員を解雇することができない」旨の規定によって、なされた解雇は無効になって、少なくとも期間満了までの残りの期間分の給料の支払いは会社に求められるのでしょうか?
有期雇用期間の途中の解雇について、その解雇事由が一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う必要があると、民法628条で定められています。
つまり、やむを得ない事由がない中途解約の場合、解雇は無効となり、会社側に過失があるので損害賠償とともに労基法第26条の休業手当の支払いが必要となります。
まとめると、パート社員の勤務成績の悪さが著しく雇用期間満了まで従事させられない状態で、業績の著しい悪化で雇用期間満了まで雇い続けることが経営上できない場合だと中途解雇も有効ですが、そこまで至らない程度の業務量の減少という会社側の都合による場合には、中途解雇は無効となり、雇用期間の残りの期間分の支払い義務があります。
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一定の期間を決めて採用した場合や、ひとつのプロジェクトを完了させるのに必要な期間を定めた雇用契約の場合、その期間が満了すれば定年の到来と同じように労働契約が自動的に終了します。
これは「解雇」ではなく、「退職」にあたりますので、なんらの問題はなく、お間違いのないようお願いします(‘ω’)
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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