「会社の休みの日に、別の会社でスキルアップ(⋈◍>◡<◍)。✧♡」
副業・兼業で、いまの仕事(本業)で必要な能力を伸ばしたい社員と伸ばしてほしいと思う会社。会社として押さえておくべきは、労働時間マネジメントと残業代(割増賃金)の取扱いです。
労基法では、複数の職場で勤務する(本業&副業・兼業)場合、労働時間を通算することになっています。労働時間を通算して法定労働時間を超えるとき、会社は自社で発生した法定外労働時間について、36協定を締結したうえで残業代(割増賃金)を支払う必要があります。
とはいえ、「これは時間外になるの?休日労働扱いになるの?」と、具体的にどうすればいいのか、判断に迷われることもあるのではないでしょうか。
そこで今回は、副業・兼業での残業時間にまつわる問題(割増賃金、休日労働)について、詳しく確認していきたいと思います。
通算の場合に残業はどう扱うの?
2つの異なる企業における職場(本業&副業・兼業)での労働時間を通算した場合の割増賃金について、労基法上の支払い義務を負うのは、法定労働時間を超えて働かせた会社です。
労働時間を通算する場合の割増賃金を計算する手順は、次のようになります。
- 本業と副業・兼業のそれぞれの会社は、社員からの申告等により、他の職場での所定労働時間・所定外労働(残業)を把握する
- まず労働締結の先後の順に所定労働時間を通算する
- 次に所定外労働の発生順に時間外労働を通算する
※例:同じ日にA社(本業)とB社(副業・兼業)で働いたので、それぞれの労働時間(時間外労働あり)を通算する。
A社・B社ともに、双方の労働時間数を把握している。
【A社】
所定労働時間3時間、所定外労働2時間
【B社】
所定労働時間3時間、所定外労働1時間
→A社とB社で労働契約のとおり(所定労働時間)働いた場合、1日の労働時間は6時間で法定労働時間内におさまる
→A社で2時間延長した場合、B社での勤務が終了した時点では、A社での所定労働時間も含めた1日の労働時間は法定労働時間内。A社は割増賃金の支払の義務なし
→その後B社で延長した場合は法定労働時間外労働となる。延長した1時間についてB社は割増賃金の支払義務を負う
副業・兼業での休日の取扱いはどうなるの?
労基法では「会社は社員に対して、毎週少なくとも1日の休日をあたえなければならない」旨が定められています。
では、スキルアップのため本業の会社の休日に、別の会社で仕事するような場合はどうなるのでしょうか?
結論からお伝えしますと、本業の会社の休日を利用して他社で働く(副業・兼業)場合には、労働時間とは異なり休日は通算されません。
つまり、本業の会社では休日を付与しているのに、社員が自分の意思でその休日をつかって副業・兼業を行うとき、他社で働いたからといって本業の会社での休日労働となることはありません。
労基法で「通算するべし」と定めているのはあくまで労働時間についてであって、休日付与については適用されません。
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話は少し変わりますが、部下が休日に他社でアルバイトしていることを知っていた上司が(会社への届出を促したりせずに)放置していた場合、部下は処罰の対象となるでしょうか?
記事の本文でお伝えしたように、労働時間の通算の問題もありますし、会社の秩序を保つためにも副業・兼業について会社への届出や承認は必要です。
とはいえ、上司が知っていて放置していたということは、部下のその行為を黙認したということになります。
よって就業規則で「会社の承認なく副業・兼業をしてはダメ」と定められていても、その違反行為(他社でのアルバイト)に帰責事由はあってもその程度は軽いということになります。
★社員の副業・兼業によって自社の36協定との兼ね合いはどうなるのか、どこから時間外労働になるのかを理解しておくことがものすごく大 切です。副業・兼業で2つ以上の職場で働く場合に労働時間はどうカウントするのかについての記事はコチラからどうぞ >>副業・兼業で労働時間はどうカウントするの?
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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