副業申請が出ているDさん、最近ぐったりしてる。申請されている時間よりも、実は副業の労働時間が長いのかな?体調が心配だわ~(;´Д`)
(商社勤務 人事担当者談)
**
テレワークの浸透などによって働き手には「副業・兼業をしやすい環境になってきた」との感覚があっても、会社にしては労働時間マネジメントのあり方が気にかかるところです。
本業以外の仕事によって、メンタル的にも肉体的にもへとへとになっていないか社員の健康状態が心配だからです(企業が社員の副業・兼業を禁止する理由のひとつでもあります)。
実務的には、副業・兼業による自社の36協定とのバランス、どのラインから時間外労働になるのかをまずは理解しておくことが大切です。
そこで今回は、副業・兼業で2つ以上の職場で働く場合に労働時間はどうカウントするのか、詳しく確認していきたいと思います。
異なる職場で働く場合の労働時間
労基法では「労働時間は異なる職場で働く場合でも通算する」との旨が定められています。
たとえば、同じ日に近隣のA支店とB支店(A支店とB支店は同一企業)の両方で働いたときには労働時間は通算されるということですね。
また、労基法で「同一企業の異なる職場で働く場合だけでなく、異なる企業の職場で働く場合も労働時間は通算する」との旨も定められています。
たとえば、同じ日にC社とD社の両方で働くと労働時間は通算されることになります。
そして、本業の職場での所定労働時間と他の企業における職場(副業・兼業)での所定労働時間とを通算して法定労働時間を超える場合は、時間的に後から労働契約を結んだ企業(副業・兼業)におけるその超過分が時間外労働となります。その時間外労働の取扱いは、その職場(副業・兼業)における36協定に従うことになります。
※例:同じ日にC社(本業)とD社(副業・兼業)で働いたので、それぞれの労働時間を通算する
【C社】
所定労働時間6時間
+
【D社】
所定労働時間4時間(うち通算時間外2時間)
実務上どう取り扱うの?
同じ日における異なる企業での労働時間を通算する場合、本業の職場での労働時間とその社員からの申告等により把握した、他の企業における職場(副業・兼業)での労働時間を通算することになります。
社員からの申告等がなかった場合には、労働時間の通算は必要とされません。
また、社員からの申告等により把握した、他の企業における職場(副業・兼業)での労働時間が事実と異なっていた場合でも、社員からの申告等の通りに通算していれば足りるとされています。
そして、所定労働時間と所定外労働がある場合には、所定労働時間を通算するのにプラスして、本業の職場での所定外労働と他の企業における職場(副業・兼業)での所定外労働とを所定外労働が行われた順に通算します。
その結果、それぞれの職場で法定労働時間を超える場合は、その超過分が時間外労働となります。
※例:同じ日にC社(本業)とD社(副業・兼業)で働いたので、それぞれの労働時間(時間外労働あり)を通算する。C社・D社ともに、双方の労働時間数を把握している。
【C社】
所定労働時間4時間、所定外労働1時間
+
【D社】
所定労働時間4時間
→C社とD社の所定労働時間を通算すると8時間で法定労働時間に達する。よってC社で延長した1時間について、C社は割増賃金の支払い義務を負う
本業、副業・兼業のそれぞれの会社は、通算して時間外労働となる時間のうち、自社の職場で働かせる時間については、(自社の職場の)36協定の延長時間の範囲内におさめなければなりません。
**
労災保険については法改正(2020年9月1日以降に発生したけがや病気等について対象)により、「複数事業労働者」制度が設けられました。
「複数事業労働者」とは、業務や通勤が原因でけがや病気などになったり死亡した時点で、雇い主が同一でない複数の企業と労働契約関係にある働き手のことをいいます。
複数事業労働者の方やその遺族等の方への労災保険給付は、全ての勤務先の賃金額を合算した額を基礎として、保険給付額が決定されます。
また、1つの職場で労災認定できない場合であっても、雇い主が同一でない複数の企業の業務上の負荷(労働時間やストレス等)を総合的に評価して労災認定できる場合は保険給付が受けられることになりました。
★「これは時間外になるの?休日労働扱いになるの?」具体的にどうすればいいのか、判断に迷われることはありませんか?副業・兼業での残業時間にまつわる問題(割増賃金、休日労働)についての記事はコチラからどうぞ >>副業・兼業で残業と休日はどう取り扱うの?
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
■提供中のコンサルティング
■顧問契約・単発のご相談を承っています
■役に立つ無料コンテンツ配信中
■ブログの過去記事