当社は業界的に深夜残業が普通で、睡眠不足になっても疲れがたまって眠りが浅い・・・といった社員の声も聞く。睡眠障害や不眠はメンタル不全につながりやすいから、会社としてどう対応すればいいのか・・・
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社員の健康対策に考えをめぐらす経営者、人事担当者は多いでしょう。疲れるとストレス耐性が落ちるので、「休む=自分のコンディションを整える」時間を取ることはとても大切です。
社員の生活時間や睡眠時間を確保する方法のひとつとして、比較的新しい制度ですが、「勤務間インターバル」の導入があります。
そこで今回は、勤務間インターバルを導入する具体的な例などについて、詳しく確認していきたいと思います。
勤務間インターバルとは
勤務間インターバルとは、ある日の残業時間を含めた終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息時間を設けることで、社員の生活時間や睡眠時間を確保しようとするものです。
「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(平成30年7月6日公布)により、労働時間にまつわる法改正が行われ、勤務間インターバルの設定が努力義務として導入されました。
これは、ワーク・ライフ・バランスを保ちながら働き続けることを可能にする制度であり、過労死の防止のためにも必要があるからです。
勤務間インターバル制はすでに、EUにおいて制度化されています(24時間の間に連続した11時間の休息時間が必要)。たとえば、23時まで残業した場合、23時間から11時間の休息時間をとると、たとえ定時の始業時刻が8時であっても、翌日の始業開始時刻は午前10時ということになります。
わが国の場合も高度プロフェッショナル制度を導入する際には「始業時刻から24時間を経過するまでに11時間以上の継続した休息時間の確保」が要件として設定されています。
ですが、それ以外の場合には勤務間インターバル制の導入は努力義務であって、休息時間の設定も自由で規制はありません。
勤務間インターバルをどう設定するの?
前段ではEUの例をお伝えしましたが、わが国では具体的にどのように勤務間インターバルを設定するとよいのでしょうか。
前段の例のように、ある日の終業時刻が深夜近くになった場合、翌日の始業時刻を、休息期間を確保できるまで繰り下げる仕組みが考えられます。
また、前段の例では本来の始業時刻8時から勤務間インターバル制による始業開始10時までの2時間、始業時刻をずらすことが必要でした。
この場合の取扱いは、(日本では)就業規則に定める必要がありますが、次の2パターンが考えられます。
①規定例:休息時間を確保し、翌日の所定労働時間は変更しないパターン
「〇〇時間の勤務間インターバルの確保のため、翌日の始業時刻は繰り下げ、その繰り下げ時間数に応じて終業時刻を繰り下げる」
②規定例:休息時間を確保し、翌日の所定労働時間も短縮するパターン
「〇〇時間の勤務間インターバルの確保のため、翌日の始業時刻は繰り下げ、その所要時間は勤務したものとして取り扱う」
このほか、ある時刻以降の残業を禁止し、次の始業時刻以前の勤務を認めないことで休息時間を確保する方法も考えられます。
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これまでの労働時間の規制は「はたらく時間」に着目して行われてきました(「労働時間の長さの上限は〇〇時間まで」のような)。
この勤務間インターバル制は、まったく逆の発想で「はたらかない時間」に着目されているところがポイントです。
つまり、疲労回復に効く「オフの時間」を直接的に規定しているので、健康対策として導入の効果が期待されています。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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