Aさんを関連会社に出向させて2か月半。うちではほぼ残業がなかったが、出向先では毎日3時間ほどの残業があり、休日出勤もあるそうだ。仕事の進め方や手順などうちとは異なる点もあり、ストレスを感じているらしい。精神状態が不安定になれば、出向の打ち切りなども考えないといけないのだろうか・・・
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出向先でストレスを抱える出向社員から相談された上司が、会社としての対応に悩んでいます。会社には社員に対する安全配慮義務があるからです。とはいえ、出向先との関係もあるので、出向元としてはどのような対応をとるべきなのか・・・
そこで今回は、ストレスを抱える出向社員に対して、出向元の会社はどのような対応をとるべきか、詳しく確認していきたいと思います。
出向社員の安全配慮義務は誰が負う?
会社には、社員の生命、身体等を危険から保護するよう配慮するべき義務があります。この義務を安全配慮義務といいます。
では、自社のオフィスではなく他社で働いている出向社員については、どのように考えるとよいのでしょうか。
出向(在籍出向)は、出向元における社員としての地位を持ったまま、出向先で働かせるものです。
出向元と出向先の両方で二重の労働関係が成立するので、出向社員は出向元企業の社員であると同時に、出向先の社員でもあるということになります。
したがって、出向社員の安全配慮義務を考えるときには、出向元の会社が負う安全配慮義務と出向先の会社が負う安全配慮義務を考えなければなりません。
実務的にはどうなる?
冒頭の例に戻り、出向元の安全配慮義務についてみていきましょう。
出向社員のAさんは出向元に在籍しているとはいえ、出向先の会社で働いています。出向元の上司としては、日頃どんな様子なのか直接的にはわかりません。
とはいえ、出向元が出向社員本人やその家族から出向先での厳しい労働条件や仕事の困難さなどについて相談を受けた場合には、話は別です(Aさんは元上司に相談したようですね)。出向元に出向社員の勤務状態や健康状態などを確認する義務が生じます。
勤務の状況や身体の具合を確認した結果、休暇をとって休養を勧めたり、医師の診断を受けるよう勧告する義務が生じるかもしれません。場合によっては、出向を取りやめにしなければならないこともあるでしょう。
強いストレスや悩みを抱えている様子が出向社員から伺えるなら、メンタルヘルス不全からうつ病などの精神疾患に罹患する可能性はゼロではありません。もし、そういった情報を入手したときには、前述のような対応をとらなければ安全配慮義務違反に問われることもあり得ます。
出向元は出向社員の状態についての情報を入手したときは、本人の職務適性や職場環境などを考慮して適切な対応を講じることが求められます。
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出向社員に限らず、部下からメンタルヘルス不調について相談されたとき、大切なのはまず相談に対して、時間をつくって話をきくことです(←アドバイスするよりもじっくり話を聞く)。
安心して相談してもらい、かつ親身になって話をきくために、なるべく個室で相談にのるようにします(←プライバシーへの配慮)。つい、「じゃあいっぱい飲みながら・・・」とお酒の席に誘ってしまいがちですが、避けるようにしましょう(←相談内容を正確に把握するため、酔っぱらってしまうと記憶が曖昧になる)。
問題解決のために、「気合で乗りきれ」のような精神論的なアドバイスではなく、具体的な配慮の内容を考えたいですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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