「職場改善のアイデアを社内で募ることになりました。優秀なアイデアには報奨金を出したいのですが、これも社員の給料にあたりますか?」
会社が社員に支払うお金について、すべてが賃金に該当するかというとそうではありません。「〇〇手当という名称だから賃金」「〇〇補助という名称だから賃金にあたらない」というわけでもありません。
どんな名称であるかを問わず、会社が社員に支払うもののうち、社員が使用従属関係の下で行う労働に対して、その対価として支払うものを「賃金」といいます。
・・・とはいえ、日常の具体的なシーンにおいては判断に迷うことも多いのではないでしょうか。
そこで今回は、職場改善アイデアの報奨金はどうなるのかはじめ、「賃金の定義」について詳しく確認していきたいと思います。
そもそも賃金とは
労基法において賃金とは「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」と定義されています。
ここでいう「労働の対償」とは、労働の対価のことです。これは実際に働いた労働時間や出来高に応じて支払われるものだけを指すのではありません。
もっと広い意味で、社員の生活を維持していくために会社が雇っている社員に支給するものであって、かつ支給条件の明確なもの(社員に法律上の請求権があるもの)であれば、すべて賃金に該当します。
このようなものであれば、たとえその名称が「〇〇補助」「〇〇助成」といったものであっても賃金に該当し、法律上の賃金としての取扱いを受けることになります(たとえば、割増賃金の算定基礎に含めないといけないなど)。
よって、タイトルにある「職場改善の報奨金」については、支給条件が明確であるけれど、労働の対価ではないので賃金にあたりません。
具体的にはどうなる?
ストックオプション制度から得られる利益は、それが発生する利益および額ともに社員に委ねられているので、賃金にあたりません。
また、職務発明の会社への権利の承継を承諾する際の対価である「職務発明補償金」も労働の対価ではないので賃金に該当しません。
さらに、弔慰金など会社が遺族に支払うものは、社員本人に支払うものではないので、賃金には該当しません。
これらを表にまとめると下記のようになります。
会社が社員に支給するもの |
支給条件が明確で、社員に労働の対価として請求権があるもの | 賃金 |
支給条件が明確だが、実費弁償的なもの | 出張旅費、社用交際費、作業用品代など | |
支給条件が明確でなく、任意的・恩恵的なもの ※任意的・恩恵的なものであっても、就業規則などであらかじめ支給条件が明確にされたものは、会社に支払い義務が生じ、社員に権利として保障されるため賃金となる |
福利厚生給付、慶弔見舞金など | |
支給条件が明確だが、労働の対価ではないもの | 発明奨励金、ストックオプション、改善提案報奨金など |
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ここでお伝えしたのは、あくまで労基法第11条(「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」)の賃金にあたるかどうか、というお話です。
所得税法上の取扱いとは異なる場合もありますので、注意なさってくださいね。
(例:ストックオプション→最高判決は所得税法上、給与所得と判示)
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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