「本当は給料から差し引くべきところですが、かわいそうなのでそのまま出しました。法律的にアウトじゃないですよね?」
法律的に照らし合わせると賃金カットとなるところを、社長の温情で実行せずに、通常通りに満額支給した・・・
「温情なんて公平さに欠ける"(-""-)"」との声があるかもしれませんが、ここで扱いたいテーマから逸れるので、ひとまず置いておきます。
お伝えしたいのは、賃金カットしなかったことで、実は、法律に反することになる場合(不当労働行為)もあり、注意しなければならないということです。
そこで今回は、賃金カットしないことが違法(不当労働行為)となるのはどんなときなのかについて、詳しく確認していきたいと思います。
賃金カットしないと違法となるとき
結論から申し上げると、賃金カットしなければ違法(不当労働行為)となるのは、ストライキの場合です。
日本では憲法によって、労働者に団結権が保障されています。そのため、会社側が反組合的行為を行うことを不当労働行為として禁止しています。
法律で不当労働行為として禁止されていることのなかに、会社が労働組合の結成または運営に対し、各種の干渉行為をすること、およびその手段としてよく利用される経理上の援助をすることがあります。
今回のテーマと関係するのが、「経理上の援助」の禁止です。これは、財政面から労働組合の自主性を失わせるおそれのあることを備えたものを禁止しています。
お金で組合活動を「骨抜き」にするのはダメだということですね。
たとえば、組合専従者に対する給料の支給、組合大会出席者への旅費の支給、会議に要する費用の支出、ストライキ参加者へのスト中の賃金の支給などがこれにあたります。
ストライキによる賃金カット
出勤日(労働日)に仕事をせずに欠勤するということは、労働契約で約束した債務の不履行となります。よって、働かなかった社員には賃金請求権が発生しません。
労働契約に「欠勤しても控除しない」という特約がなければ、欠勤控除はノーワーク・ノーペイの原則によって法律上当然です。これはストライキによる労務不提供も同様です。
さらに、前段でお伝えしたように、ストライキの場合にはたとえ「欠勤控除しない」という特約があっても、賃金カットしないで支払うことは組合活動への経費援助にあたるので、不当労働行為となり許されません。
ストライキによる賃金カットの控除計算の方法は、特約がなければ、労働日を分母にして計算しますが、「暦日による」との特約やこれまでの慣行があるときにはそれに従うことになります。
また判例では、ストライキ日を欠勤として賞与の査定をすることもノーワーク・ノーペイの原則にのっとって適法とするものと、組合を嫌ってのストライキの制裁として不当労働行為とするものがあります。
これは、具体的な事情や、会社側に不当労働行為の意思があったかどうかの立証等によることになります。
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「社員のために良かれと思ってやったことが、結局余計なお世話になるなんて・・・」
前述のように、社員のために「よかれ」と思って賃金カットしないことが、法律に反することになる場合(不当労働行為)もあるのですよね・・・。
ひとつの知識として、頭の片隅にでも覚えていただければ、と思います。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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