病気の治療で通院するため、欠勤や早退の多い社員がいる。早退した日を出勤日にしたらいいという声が社内であるが、午前10時に早退した日なんかは1時間しか勤務していないのにどうなのか、という声もある。どう対応しようか・・・
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労基法では、年休取得の要件を「所定期間内の全労働日における8割以上の出勤率」としています。そのため、出勤率が8割を切ると次年度の年休付与がゼロになってしまい、通院が難しくなるのではないか・・・と心配する人事担当者さん。
とはいえ、早退で1時間しか勤務していない日でも出勤したものとして、出勤率に含めてもいいのか、と判断に迷われるのもわかります。
そこで今回は、年休の発生要件である出勤率に午前10時で早退した日を含めてもいいのか、について確認していきたいと思います。
年休取得の要件「出勤率」の考え方
入社後、最初に年次有給休暇の権利が発生するのは、入社日から6か月間継続して勤務した場合です。
つまり、最初の年休の発生要件は、「6か月間継続勤務して全労働日の8割以上出勤したこと」になります。
法律上の年休取得の要件として出勤率が設定されているからには、出勤とみなされる日・全労働日から除外される日を押さえておくことが大切です。
まとめると、下記のようになります。
【全労働日に入り、かつ出勤とみなされる日】
- 年次有給休暇日
- 産前・産後休暇日
- 子の看護休暇・介護休暇日
- 育児休業・介護休業日
- 業務上災害による休業日
【全労働日から除外され、かつ出勤日から除外される日】
- 公民権行使の時間(裁判員休暇など)
- 休職期間中
- 代替休暇日
- 休日労働日
- ストライキ等の日
- 会社の責めに帰する休業日
【全労働日・出勤日ともに算入するかどうかは会社の自由】
- 会社休暇日
- 生理休暇日
午前10時で早退した日はどうなるの?
年休の目的は「社員の休養を確保する」という点にあり、年休の最小単位は「労働日(営業日)」単位になっています。細切れに休んだところで、心身ともに疲労から解放されないからです。
このことは、労基法39条で「会社は6か月継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤した社員に、継続し、または分割した“10労働日の有給休暇”を与えないといけない」としていることからもわかります。
この労基法39条で定める、年休の単位である「労働日」とは、原則として暦日計算によるべきものです。つまり、当日の午前0時から午後12時までの暦日24時間を意味しています。
したがって、「全労働日の8割以上出勤」の「労働日」についても、暦日単位で扱われるものと考えられます。
午前10時で早退して、たとえ1時間しか勤務していないとしても、欠勤と同じような扱いで出勤日から除くということはできません。その日は出勤した日として出勤率の計算を行うことになります。
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治療や通院のため、欠勤や早退、休職、時短勤務となる社員が出た場合に、もし周囲から不満の声があがるのなら、もともと仕事の進め方やコミュニケーションがうまくいっていなかったのかもしれません。
いざというとき周りの社員が対応できるよう、普段から情報の共有化、業務のマニュアル化などを図っておくことは大切ですね。(できれば避けたいですが)誰もがいつ病気になるかわかりませんものね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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