この夏から他社へ出向することが決まったAさん。初めての経験だけに不安で胸がいっぱいです。
それだけに良からぬ想像をしてしまいます。
「出向中にもし、出向先の会社が潰れたら私はどうなるの?出向期間がまだ残っていても元の会社にすぐ戻れるの?」
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出向(在籍出向)では、出向元と出向先の両方で二重の労働関係が成立します。つまり、出向社員は、出向元企業の社員であると同時に、出向先の社員でもあるということです。
そのため、Aさんのように不安を抱くのも無理はないかもしれません。
そこで今回は、出向期間中に出向先が破産したとき、出向社員はすぐ出向元に復帰できるのか、詳しく確認していきたいと思います。
出向による労働契約関係
出向とは、出向元企業で働く雇用関係のある社員を、出向元に在籍のまま出向先企業において、出向先の指揮命令によって出向先の仕事をさせることをいいます。
出向社員との労働契約の核となる部分(労働契約上の地位に関するもの、具体的には定年、退職金、解雇など)は出向元企業に残っていることになります。出向社員の出向元企業での社員としての地位の維持や地位の解消を行う権利は出向元企業にある、ということです。
なお、会社が破産宣言を受けた場合には、破産管財人は期間の定めがある場合でも社員との労働契約について解約申入れ(解雇)することができます(労働契約は解約申入れの30日経過後に終了)。
破産手続きの終了によって、通常破産会社は消滅します。そのため、破産管財人の解雇権の行使は原則として解雇権の濫用にはあたらないとされています。
出向先が破産したとき
前段でお伝えしたように、出向先企業が破産しても、出向社員の社員としての地位は出向元企業に残っています。
そのため、出向先企業の破産管財人は、出向社員の出向元企業との労働契約を終了させる解約申入れを行うことはできません。
ですが、出向先企業の破産管財人は、出向社員に関する出向元・出向先企業間の出向契約を解約することはできます。これによって、出向社員は出向先企業で働くことはできなくなりますから、出向元企業に復帰することになります。
出向先企業が破産したことで出向の目的が達成できないことは明らかですから、たとえ予定された出向期間が終了してなくても、出向社員は出向元企業への復帰を求めることができます。
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もしも、出向元企業が破産したとき、出向社員はどうなるでしょうか?
破産管財人は、通常早い段階で出向元企業の社員との労働契約の解約申入れをします。
出向社員と出向先企業との間の労働契約関係は、出向元企業との労働関係を前提としています。そのため、出向社員と出向元企業との労働契約が解約されたときは、出向社員と出向先企業との労働契約関係も終了することになります。
(出向先企業と出向社員との間で新たな労働契約を結ばない限り、出向先企業で引き続いて働くことはできません。)
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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