「ハローワークの手続きで困っています。離職証明書の離職理由で“希望退職の募集又は退職勧奨”という項目がありますが、希望退職の募集と退職勧奨はどう違うんですか?」
人事担当者さんのギモンですが、雇用保険被保険者離職証明書にある細かな記載によく気が付かれました(=゚ω゚)ノ
希望退職と退職勧奨の両方とも、「労働契約の合意解約の申入れ」という点では共通しているものの、会社と社員のどちら側による解約の申入れなのか、という点で両者は異なります。
そのため後日トラブルにつながる可能性もありますから、両者の違いを踏まえながら、特に退職勧奨について理解を深めておくことが大切でしょう(退職勧奨は場合によっては無効になることもあります)。
そこで今回は、退職勧奨と希望退職の募集の違いについて詳しく確認していきたいと思います。
「退職勧奨」と「希望退職の募集」とは何か
希望退職とは、労働契約を社員本人と会社との双方の合意に基づいて解約するものです。
そうであるからこそ、会社からの説得があったり、退職条件が優遇されることもあり得るでしょうし、その社員の自由意思を抑圧しない限り、法律的に整理解雇のような厳格な要件を会社に課せられることはありません。
会社からの一方的な意思表示による解雇とは、本質的に全く異なるものだといえます。
希望退職と退職勧奨のふたつは、いずれも労働契約の合意解約の申入れですが、下記の点で異なります。
- 希望退職→会社による退職の誘いに対して社員側から解約を申し入れること
- 退職勧奨→会社側から解約を申し入れること
退職勧奨に応じて社員本人が退職願を提出した場合は、「解雇」ではなくあくまでも合意退職にあたります。ただし、雇用保険の離職証明書における離職理由の記載は、「希望退職の募集又は退職勧奨」の項目にチェックすることになります(具体的な理由は「会社都合による勧奨退職」)。
後になってトラブルに発展しないよう、記載には注意が必要です。
退職勧奨が無効になるとき、有効になるとき
一般的には、退職勧奨と本人の退職願の提出という行為は、法律的には別個のものと解釈されています。
よって、たとえ退職勧奨のプロセスに不法性があったとしても、本人が真意によって退職願を提出したときには、有効な任意退職として扱われることになります。
ただし、自由意思によらず、心理的なプレッシャーを与えるなどして提出を強要された退職願は無効、と判断されるケースもあります。
また、後日になって「本当は退職したくない」など社員が退職に異議を唱えだし、トラブルになることもあるかもしれません。
ですが、社員が退職願を提出してから、異議を唱えずに解雇予告手当、円満退職といった意味合いの退職金を受け取っている場合には、会社の合意解約の申入れに対する社員の明示または黙示の承諾があったものと解釈されます。
このようにすでに合意退職の効果が発生した以上は、たとえそれが会社による脅迫であっても、社員による不注意な間違いであっても、もはや退職の意思表示は撤回する余地はなくなる、と考えられています(退職勧奨は有効となる)。
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希望退職や退職勧奨を進めるなかで、退職願の提出があったと思いきや、すぐさま「やっぱり辞めるのやめます~」と引っ込める・・・というようなことがあると、「一体どっちやねん?!」と仕事上の関係者はいちいち振り回されることになり、人事マネジメント上よくありませんよね。
就業規則にあらかじめ退職願の受理と承諾権限を有する者を明確に規定しておくことは、こういった事態の対策のひとつになるでしょう。
(退職願が所属長に受理されたときは、会社がその意思を認めたことになり、原則として社員は撤回できない、といった旨を定めておく)
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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