あれ?Aさんって同僚のBさんから、やたら根掘り葉掘りプライベートのことを聞かれているなあ。波風をたてないように一見穏やかだけど、Aさんは決して喜んではいない、これってもしかして・・・(゚д゚)!
**
たとえ噂やなんとなくな雰囲気レベルの話であっても、セクハラの問題を察したときは、人事・担当者の耳に入れて対策を講じることが、事態を打開するポイントです。
実際、会社がセクハラの事実を把握するのは、本人からの直接の申告よりも、周囲が変だと察知して人事部へ相談することが多いようです。
職場のセクハラについては、男女雇用機会均等法により、会社にその対策(やらないといけないこと)が義務付けられていますが、今回は逆の視点から、セクハラの申告があったときに会社がやってはいけないことについて、詳しく確認していきたいと思います。
セクハラ解雇は無効
社員からセクハラの申告を受けた場合、会社には社員の訴えに誠実に対応し、社員が自分の意に反して退職することのないようにする義務があります。
(パワハラ・セクハラ・マタハラ等は複合的な問題として生じることもあり、一元的に対応できる相談体制を構築できるとなおいいです。)
この義務は、「職場環境配慮義務」といわれるものです。会社は、職場で業務を遂行するなかで社員の人格的尊厳を侵し、仕事に重大な支障をきたすような事態の発生を防ぐ、または適切に対処して、社員にとって働きやすい職場環境を保つよう配慮しなければなりません。
そのため、セクハラ被害の申告によって、会社がその社員(被害者)に対して不利益に取り扱うことは許されず、仕返しや嫌がらせとして解雇することは許されません。
会社が被害者を解雇しなくても、退職に追い込もうとしてあえて被害者に対してなんの配慮も行わない、といったこともダメです。
これらのような行為をした会社は、被害者に対し、不法行為または債務不履行責任に基づく損害賠償義務を負うことになります。
実務上どうなる?
社員からセクハラを受けたという申告があったとき、会社はまず、そのセクハラ事案について十分な調査を行わないといけません。
にもかかわらず、会社が十分な調査をしないで、いとも簡単に相手方(とくに上司である場合など)の発言を信じ、「これは単なる個人間でのトラブルにすぎない」ということで、むしろ被害者に非があると片付ける。そして被害者を退職に追い込んだり、解雇にする。
このような場合、会社は職場環境配慮義務違反ということで、不法行為または債務不履行に基づく損害賠償責任を負います。
解雇権の濫用の場合、通常なら職場復帰を求めて解雇の無効が争われる(裁判になる)ことになるでしょう。
ただ、セクハラの事案においては(被害者が居づらくなって)職場復帰が現実として困難になるというのは、想像に難くありません。
そのため、職場復帰に代わる救済として、慰謝料のほかに一定期間の賃金相当額が損害として認められる場合があります。
**
「セクハラをいちいち気にしていたら職場のコミュニケーションがとれない」と聞くこともありますが、基本的に仕事上の関係においては、仕事と直接関係のない容姿やプライベートについてあれこれ言ってはダメです。
「スタイルいいね、とか褒め言葉なのに何が悪いの?」という声もあるかもしれませんが、部下や後輩を褒めて育てるのであれば、その仕事ぶりを褒めましょう。
上司、先輩として、(部下や後輩の)実際の仕事ぶりに関心をもってよく見ること。
そしてタイミングを逸さず、具体的に褒めることが職場のコミュニケーションにつながると思います。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
■提供中のコンサルティング
■顧問契約・単発のご相談を承っています
■役に立つ無料コンテンツ配信中
■ブログの過去記事