定年を迎えたAさんは再雇用制度でパート社員として働くことになっている。正社員時代の未消化の年休は繰り越さないでリセットするんだよね、新しい労働契約になるんだし・・・?(新人の人事担当者談)
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定年退職者をパート社員や嘱託社員として再雇用した場合、未消化の年休についてどのように対応すればいいのか・・・
正社員時代の労働契約と再雇用後の労働契約は形式的には別のものなので、年休の扱いに迷ってしまう担当者さんです。
ズバリ、判断のポイントは「継続勤務なのかどうか?」です。
そこで今回は、定年後の再雇用者にまつわる正社員時代の未消化の年休をどう取扱うべきなのか、詳しく確認していきたいと思います。
継続勤務ってどんなこと?
労基法では年休の発生要件を、「入社日から起算して6ヵ月以上継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した場合」としています。
ここで「継続」して働いたとは、どういう状態のことを意味するのでしょうか。これについて、行政通達では下記のような内容を示しています。
- 継続勤務とはその会社における在籍期間(雇用契約が存続する期間)のこと
- 継続勤務かどうかは、勤務の実態に即して判断すること
- 次の場合、実質的に雇用関係が継続しているなら勤続年数を通算すること
- 定年退職による退職者を引き続き嘱託社員として再雇用した場合(退職金を支給している場合を含む)*ただし、退職と再採用の間に相当の期間があり、雇用関係が途絶えている場合を除く*
- 日雇い労働、2ヵ月以内の期間労働、4か月以内の季節労働、試用期間中の労働、これらに従事する者でも、実態からみて引き続き雇用されている場合
- 臨時工が1ヵ月ごとに雇用契約を更新されて6ヵ月以上に及び、その実態からみて引き続き雇用されている場合
- 在籍出向の場合
- 休職から復職した場合
- パート社員などを正社員に切替えた場合
- 会社が解散し、社員の待遇を含め権利義務関係が新会社に包括承継された場合
- 社員全員を解雇し、所定の退職金を支給し、その後改めて一部の社員を再採用したが、事業の実態は人員を縮小しただけで、従前とほとんど変わらず事業を継続していた場合
正社員時代の未消化の年休はどうなる?
前段の行政通達をみると、定年退職後に引き続きパート社員として再雇用し、その実態から引き続き雇用されていると認められる場合、基本的には、勤務年数は通算されるものだということがわかります。
行政通達では、「退職と再採用の間に相当の期間があり、雇用関係が途絶えている場合は勤続年数を通算しない」との旨も示されていますが、勤務の実態に即して判断しなければなりません。
年休の付与義務から免れようと、契約更新時に一定の間隔を置いてから契約を更新しているケースなどはもちろんダメです。
ですが、形式的に間隔を設けて契約を更新したとしても、実態などを総合的かつ客観的に判断した結果、「引き続き雇用されている」と認められる場合は継続勤務として取り扱われることになります。
よって、退職後の再雇用が継続勤務として解釈される場合は、正社員時代の未消化の年休は次年度に繰り越されることになります。
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上記の内容の補足ですが、雇用契約の更新にあたって相当な期間が空くと、継続勤務が「中断」されるということで、年休の付与日数にかかる勤続年数もリセットされることになります。
「相当な期間」とはどのくらいの期間なのかというと、単に期間の長さだけでは決められず、下記の点を総合的にみて判断することになります。
- 再雇用の手続きがきちんと行われているか
- (再雇用までの)期間の目的はどんなものなのか
- 再雇用されるのは確実なのか
- 再雇用の実態はどうなのか
まとめると、「〇〇日間なら中断」とは決められていないので、通り一遍に考えずに勤務の実態によって判断することがポイントとなります。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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